第51話「火のほこら」
火のほこらはロックバードの巣のさらに先に進んだ場所にある。
いつの間にか慣れてきたか、馬に乗っていても尻が痛くなくなっていた。
少しずつ俺の肉体もタフになってきたということかな?
「到着しました」
ジーナに言われて馬から降りる。
火のほこらの外見は小さな洞窟だが、温かい空気がここからでも伝わってきた。
マップのマイナスダメージ「暑熱」があるダンジョンじゃないはずだが、ダメージが入らなくても暑さは感じるって思っておいたほうがよさそうだな。
「行くか」
いつものようにジーナが馬を収納したので声をかける。
火のほこらは熱や火を連想させる明るい場所だが、床や壁、天井は黒いごつごつした石や岩だらけだ。
床や壁に叩きつけられるだけで、ひ弱な魔法使いは特大ダメージが入るんだろうなと思える。
最初のうちは一本道で、ゆっくりと下っていると火ネズミが一匹出てきた。
火ネズミは赤い毛皮を持ち、口の付近に火をまとっているし、尻尾も火で燃えている。
これは体内の器官「火炎袋」で作成されたものらしい。
体長は五十センチくらいあるので、げっ歯類の可愛いモフモフを期待するとがっかりするだろう。
どちらかと言えばホラー系に出てきそうな見た目だ。
ネズミから連想できるように、一匹見かけたら十匹と戦うことになると思っていい群体系モンスターである。
原作はあくまでもゲームだったので「大群」と言ってもそんなにストレスはかからなかったが、現実になったらやばい類じゃないかという懸念は少しあった。
「ジーナ任せた」
敵の数が少ないならジーナに処理を任せたほうがいい。
彼女は俺よりもずっと強いけど、今のところ一対一専門と言える戦闘スタイルだからだ。
「はっ」
ジーナもそれを理解しているのか、いつものように瞬殺する。
ピギーという悲鳴がほこら内部に響いた後、わらわらと火ネズミの群れが現れた。
遠目に何体いるかわからんなぁと思いながら魔法の準備をする。
一回くらいは呪文を唱えても大丈夫だろう。
「清らなる水の神よ。不浄を洗い清め、邪悪を討つ力を我に与えよ」
水の塊が俺の頭上に出現する。
そして火ネズミの群れの先頭が射程に入ってきてさらに一秒待ち、魔法を発射した。
「アクアショット」
いくつもの悲鳴が聞こえ、火ネズミの群れは一掃される。
目算だとたぶん八匹くらいはいたはずなので、経験値がおいしい。
いくつかアイテムがドロップしたのでジーナが回収する。
「あるじ様、『火ネズミの火炎袋』が二つ、『火ネズミの尻尾』が四つドロップしたようです」
「火ネズミの火炎袋」はいらないなぁ。
同系統でもっといい性能のアイテムがあるもんな。
「尻尾が四つは幸先がいいな」
そう思っておこう。
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