第48話「『過去の栄光』二つ目」

「疲れた……」


 何とか二つ目の『過去の栄光』をゲットしてジーナに装備させたが、けっこう時間を食ってしまった。


 今日一日じゃ出ない可能性もあったんだし、その苦行を回避できただけでよしとしよう。


 帰りは羽のペンダントでひとっ飛びだ。


 多少遅くなって帰ったところで、城の人間は時間を忘れて遊んできたのかという目で見るだけで誰も変に思わない。


 ごまかす必要がまったくないのは楽でいいな。


 かりにも帝位継承権を失っていない皇子なのにこんな状況だからこそ、将来破滅してしまうわけだが。


「あるじ様、今日もマッサージいたしましょうか?」


 とジーナに聞かれる。

 疲れを思わず声に出してしまったからな。


「ああ。足を頼んでいいか」


 ポーションを飲めば解決できるかもしれないが、ダンジョン探索してないのに飲むのはもったいない気がする。


 皇族で予算は持っているんだから、一本くらいケチってどうするってもう一人の自分が頭の片隅であきれているんだが、ふんぎりはつかない。


 この辺ラスターと前世がごっちゃになっている感はあるな。


「かしこまりました」


 ジーナは快諾する。


 まあジーナにマッサージしてもらうのは気持ちいいし、ラスターの特権だからたっぷりと堪能しようか。

 

 部屋に戻って立派なソファーに腰を下ろす。


 ぼんやり待っていると、ジーナがお湯を入れてタオルをかけた白い手桶と、お湯が入ってるだけの黒い手桶を両手に抱えて戻ってくる。


「お待たせしました」


 ジーナはそう言ってしゃがみこみ、俺の靴と靴下を脱がせた。

 湯につけたタオルで拭いた後、俺の両足はもう一つの手桶に誘導される。


「湯加減はいかがですか?」


「ちょうどいい」

 

 本当に適温で、あたたかくて気持ちよかった。


「よかったです」


 ジーナはほっとする。

 この手の見極めは彼女は上手いなと感心した。


 メイドの技能か何かであるんだろうか。

 それとも単純に経験と勘かな。


 いずれにせよ見事なものだ。

 湯で足があったまった後、タオルできれいに拭かれてマッサージがはじまる。


「では失礼します」


 と言って彼女あまずは左の足裏から取り掛かった。

 ぐいぐいとちょうどいい加減でもまれるのが気持ちいい。


 俺の好みとかすべて把握しているような手つきだ。

 ジーナに全部を任せていればいいと思って体から力を抜く。


「力加減はいかがでしょう?」


 ジーナは一度手を止めてまた聞いてくる。


「ちょうどいい。さすがジーナだ」


 俺は満足感を込めて答えた。


「ありがとうございます」


 安心したように微笑み、彼女はマッサージを再開する。

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