第47話「『過去の栄光』」

「ここからは宝箱を探してみよう」


 とジーナに声をかけて第三階層を徘徊する。

 敵からのドロップじゃなくて、ランダム出現の宝箱ってのが厄介なところだ。


 一人だと正直歩きたくないダンジョンだからな、ここ……。


「ここは怨念が集めやすいからな。これからは俺も攻撃に参加するぞ」


 これもジーナに言っておく。

 条件が整えばこのダンジョンならガンガン魔法を使うことができる。


 スケルトン、ゴースト、ゾンビを俺も一緒になって倒す。

 俺の魔法が当たれば全部一撃で倒せるのは、下級アンデッドだからだ。


 一戦あたりに消費する時間が激減したので、ジーナの負担も減らせている。


 下級アンデッドはスライムたちと違ってアイテムでおびき寄せることはできない。


 ただまあ、基本的に生者への憎悪と嫉妬で動いているとされ、生きてる人間を自分たちの仲間に引きずり込もうとして来る習性があるという。


 原作で高レベルパーティーで突っ込んだ時には、上級アンデッドがうじゃうじゃわいてきたもんだ。

 

 そしてそれの対策の一つとして『隠密隠形』がある。

 これを使うことで、アンデッドたちは生者の気配を感じ取れなくなるのだ。


 もっとも目視で発見されるのだけは防ぎようないんだが、それは割り切るしかないだろう。


 宝箱が通路の隅に出現したので、ジーナが開錠する。


「あるじ様」


 彼女は驚いた顔をして黒いネックレスを俺に差し出す。


「もしやこれは」


「ああ、『過去の栄光』だな」


 まさかいきなり引き当てることができるとは。

 俺は受け取って自分で装備する。


 だが、ここからが本当にきついところだ。


「じゃああと一つ、探して歩くぞ」


「え……」


 俺の指示にジーナは珍しくびっくりする。


「こいつの装備効果はお前にもある。お前の分を取らないとな」


 本当なら交戦回数が俺より多い彼女にまず装備してほしいんだが、性格的に難しいだろう。


 俺が装備してお前もつけろと言う必要がある。


「かしこまりました」


 ジーナは納得したようでうなずく。

 『怨念隠形』を発動させてからアンデッドとの遭遇数は半減した。


 倒しても旨みが少ない敵は遭遇しないほうが得なように思える。


 もっともアンデッドとの戦闘回数をもっと増やせばさらに称号やスキルを会得できるので、準備がわりにある程度は今からやっておこうか。


 二回目の宝箱はからで、三回目はスケルトンが持つ「古い剣」が出てくる。

 これは売却用の装備品に過ぎない。


「次からは俺が宝箱を開けよう」


「あるじ様がですか?」


 ジーナは心配そうか顔になるが、この階層くらいまでは悪辣な罠はないので大丈夫だろう。


 俺が開けないと『過去の栄光』の効果が発動しないだろうし。

 

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