第41話「予定変更」
城に戻って自室でゴロゴロしているとジーナが戻ってくる。
「あるじ様、羽のペンダントが二つ完成いたしました」
「ご苦労」
偉そうな態度は彼女のためにもとり続けなきゃいけない。
「これで移動が楽になりますね」
「そうなんだが」
本来ならヌルヌル回廊に戻ろうと思っていたんだが。
俺はジーナに読んでいたダンジョンマップを見せる。
「予定を変更したくなった」
「は」
ジーナはただそれだけじゃ否定はせず、理由を聞こうとじっと視線を向けてきた。
俺が予定を変えようと思った理由は一つ。
「この『騎士の墓場』に行ってみたいのさ」
見落としていた隠しダンジョンの存在に気づいたからだ。
『騎士の墓場』は隠しダンジョンの一つで、プレイヤーたちがもぐるレベルに応じて出現モンスターの強さが変わるという特性がある。
それだけだったら今行く理由はないが、この隠しダンジョンは隠しスキル『死者の呼び声』と『怨念隠形』、隠しアイテム『過去の栄光』を入手できるのだ。
『死者の呼び声』は魔法使い系なら誰でも会得できるスキルで、怨念を自分の魔力に変換できる。
さらに死者を使って索敵が可能になる第二の効果もあった。
はっきり言って初期職業の俺が会得していいスキルじゃない。
次に『怨念隠形』は魔法による探知を妨害できるスキルである。
ローグ系の気配を消すスキルは魔法による探知には通用しないんだが、これで対応できるようになるだろう。
このスキルはダンジョン第三階層に到達すれば誰でも会得できる。
俺もジーナも大きな恩恵を受けられるだろう。
最後に隠しアイテム『過去の栄光』は経験値獲得量を1.2倍、アイテムドロップ率を10%アップしてくれる。
アイテムだからスキル・称号の効果と重複できるのが強みだ。
ジーナと二人で身に着けたら素材集めがはかどるだろう。
改めて情報を脳内で整理してみたら行くしかないと思える。
アンデッド系、それも霊体系モンスターが多いので今のジーナだと戦力的価値を大きく失ってしまう。
それに『騎士の墓場』は低レベルクリアボーナスはない。
この二つが今もぐりに行くかどうか迷っていた理由だ。
ただ、危険を冒す価値はあるダンジョンだからチャレンジしないのはもったいない気もする。
「『騎士の墓場』……アンデッド系が多いダンジョンですか」
ジーナは少し不安そうになった。
「お恥ずかしい話しいですが、今の私では霊体系にダメージを与える手段がとぼしいので、あるじ様をお守りできるのか自信がございません」
彼女は正直に申告する。
「まあそこはやりようがあるから大丈夫だろう」
原作だと霊体系を何匹も倒せば、霊体特攻系のスキルを獲得できた。
「少しずつ進んでみよう」
「御意」
俺が無茶はしないと思ったのか、彼女は真剣な顔のまま賛成に回る。
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