第36話「マッサージ」
「ん、んっ」
ジーナのマッサージは実に気持ちがいい。
そういうスキル持っていても不思議じゃないと思うほどだ。
まずは足の裏から、次はふくらはぎ、そして腰、背中、肩とやってもらう。
「かなり張っていますね」
とジーナは言った。
だろうなと思う。
何とか未来を作りたい一心で頑張ってきたからな。
まあ基礎体力作りにはなっただろう。
魔法使いだって基礎体力がないとやっていくのがつらい世界観だしちょうどいい。
血行が改善されたのか、体があったかくなってきている。
「ありがとう。楽になった」
「お役に立てて幸いです」
ジーナは礼を言うとうれしそうに答えた。
忠犬……忠臣のお手本みたいな性格だ。
「明日はお休みになさいますか?」
「いや、ダンジョン探索は続ける」
ジーナは心配してくれたんだろうが、いざとなればこっちの世界はポーションを飲めばだいたい解決だから問題ない。
余裕があるなら休むんだが、今の俺にはまだ余裕はないんだ。
「ロックバードの巣に行ってアイテムを手に入れたら、移動時間が短縮できるからな。そこまでいけば休憩時間を作れるだろう」
移動時間を減らせれば、その分他のことができるようになる。
早めにこの点をクリアしておくと、のちのちの大きな一歩につながるだろう。
「御意」
ジーナは俺の考えに納得したのか、反対はしなかった。
もっとも彼女の性格的によっぽどのことがない限り、反対意見を言ってこない気もしているが。
……ジーナにマッサージしてもらったせいか、睡魔がやってきた。
「あるじ様、湯あみはどうなさいますか?」
こっちの世界なら一日くらい入らないのは普通で、何なら毎日入るのは変わり者扱いされる。
だからちょっとくらいならいいかと思うんだが、何となく不快なので入ろう。
「入る。手伝ってくれ」
「はい。お任せください」
寝ぼけて多少ふらついて、俺一人だったら危険だがジーナがいるからな。
脱衣場に連れて行ってもらって服を脱がせてもらい、浴室で体を洗ってもらい、それから一緒に浴槽につかる。
「あるじ様」
うつらうつらしながらジーナの優しい声を聞く。
「ああ」
聞こえてるけど、頭がぼんやりとしている。
できれば何にも考えたくないような状態だ。
ジーナに助けられて浴槽から引き上げられて、体を拭かれていることは何となくわかる。
「あるじ様、ベッドにお連れしますね?」
という彼女の言葉にうなずき、俺は意識を手放してしまった。
あとはジーナが何とかしてくれるだろうと信頼があるからだ。
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