第33話「ジョブクリスタル」
ヌルヌル回廊のおかげでレベル15になったので、また新しく魔法を覚えることができる。
サンダー、ブリッツ、ウィンドショットときて次はどうしようか。
今後のことを考えたら念のため防御に使える魔法も一つくらいは持っておくべきか?
想像したくもないが、もしかしたらジーナのガードが間に合わない状況だって出てくるかもしれない。
レベル15で覚えられる魔法はアースウォールか。
正直、枠を一つ使う価値があるか微妙だなぁ。
弱いわけじゃないんだが、他に強かったり便利な魔法があるわけで。
やられる前にやれの精神でサンダースピアを覚えようか。
サンダースピアはサンダーの上位版で、威力と射程が上昇している。
ブリッツとあわせれば雷属性が得意な相手以外、当面大丈夫だろう。
割とバランスがガバガバなのは元々だから気にしても仕方ない。
それよりも大事なことが一つある。
俺はポケットに入れていた青い水晶玉を取り出して、ジーナに差し出す。
「ジーナ、ジョブクリスタルだ。使え」
レベル20になった彼女は、このジョブクリスタルで上位職業にステップアップ我ができるのだ。
「はい」
ジーナは両手でジョブクリスタルをつかみ、自分の額に当てる。
ジョブクリスタルは砕けて彼女は「アサシン」へジョブチェンジした。
アサシンになったことですべてのステータスが上昇し、一層強くなっただろう。
「あるじ様、今の私ならヌルヌル回廊よりもレベルが高いダンジョンに行っても、きっとお守りできると思います」
ジーナはキリっとした顔でそう申告してくる。
こういう進言は歓迎だな。
「ああ、期待しているぞ、ジーナ」
俺もレベル15になったからそろそろヌルヌル回廊を踏破する段階だろう。
位置づけ的にはレベル15か、それ以下なら踏破ボーナスを得られるはずだ。
そういうわけで俺からも提案する。
「明日はヌルヌル回廊の踏破に挑戦してみよう」
「御意」
ジーナは一瞬だけ目を見開き、すぐに意気込んだ顔になった。
自分の進言が聞き入れられたと思ったのか、どことなくうれしそうだ。
「ヌルヌル回廊を踏破したら、別の迷宮にも挑戦したい。地図を持ってきてくれ」
「はい」
ジーナは俺の言葉を予想していたのか、すぐにでも地図を差し出す。
最初はショイサの洞窟、次はヌルヌル回廊だったな。
レベル20のアサシンになったジーナがいれば安全に狩りができそうで、なおかつ城から日帰りでいけるダンジョン……「ロックバードの巣」かな。
もっとも正式なダンジョン名はなくて、通称らしいけど。
ロックバードの羽を使って作れるアイテムは、拠点とダンジョンを行き来できるようになる。
民間人は申請が必要だけど、皇子である俺は城の外までならフリーパスだ。
移動時間の短縮になるし、次の目標はこれに決定だな。
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