第30話「帝国流マウンティング」
ロイド兄の話をまとめると落ちこぼれのくせに、獣人の従者を連れて遊びまわっているのが気に入らないらしい。
いや、落ちこぼれのくせに勉学とか頑張ってると思われたら、叩き潰しにきてたくせに何言ってるんだ、この人は?
もっとも前世を思い出した俺ならともかく、単なるラスターだったらビビッて恐れ入って小さくなっていないとおかしい。
だから俺もビビりまくっている、フリをしておこう。
何一つ言い返さなくていい、そっちのほうが自然なんだから楽と言えば楽だった。
「まあ貴様のような出来損ないに何を言っても無駄か」
単にいやみを言いたいだけなのかと、日本人の俺には思えてしまう。
だが、これは帝国王侯貴族流のマウンティングだ。
どっちが上でどっちが下か念入りに心に刷り込み、反抗する気力を奪おうという目的で行われているという解釈でよさそうだ。
おどおどと見つめ返してあげると、ロイドはとても満足そうに笑う。
自己顕示欲も優越感もさぞ満足できただろう。
「そうだ、それでいい」
ロイドは去っていった。
ドアを閉めると俺はジーナに言う。
「よく耐えたな」
気のせいでなければ彼女はロイドに何度も敵意を向けていた。
俺に何らかのデメリットが発生しないなら、さっくりとロイドを始末していたとしか思えない。
「恐れ入ります」
ジーナは悔しさを隠せていない表情で言う。
「俺が力をつけたら、ロイド兄くらい何とでもできるさ」
明るく言って彼女の肩を優しく叩く。
「はい」
ジーナはうなずいていつもの顔に戻る。
ロイド兄をどうこうという発言は、他の誰かが言えば反逆罪になっているだろう。
だが、俺ことラスターは腐っても皇子の一人だ。
皇帝、皇太子以外なら場合によっては排除すると言っても何の罪にも問われない。
しっかり守られている立場だと言えるだろう。
「ま、ブリッツを覚えたし、スライムを乱獲していけばレベル上げもはかどるようになるだろう。いずれロイド兄は壮絶に泣かせてやろう」
悪い顔を意図的に作って話すと、ジーナは大きくうなずいた。
「精いっぱいお力になる所存です」
決意を秘めて彼女は言う。
さて、変なケチがついた感はあるが俺たちが明日からやることは変わらない。
簡単に言うとスライム乱獲祭りだ。
スライムを倒していけば『スライムスレイヤー』の称号、スライム特攻スキルを得られる可能性がある。
そのうち超強いスライムと戦うことを想定するなら、とっておきたいんだよな。
「ひとまずスライム対策を考えよう。対策というか、効率よく狩るためにはどうすればいいかという作戦だが」
「御意」
ジーナは闘志を燃やしながら返事をする。
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