第29話「次兄ロイド」
もう一度スライムを一掃したら狙い通りレベルが10に、ジーナはレベル18にる。
これでブリッツを覚える資格を得た。
単にスライムの経験値だけじゃなくて、スキルと称号の1.1倍の効果もあるんだろうなと思いながら俺は宮殿へ帰還する。
部屋に持ち込んでいたブリッツの魔法書を読んで覚えた。
「よしよし、順調だな」
ヌルヌル回廊のスライムならサンダー一発で片付くんだから、サンダー一発で勝負し続けるという手があるのだろうが、いずれブリッツも活躍してくれるだろう。
「おめでとうございます」
ジーナが微笑んでお祝いをしてくれる。
「うん。俺が強くなって稼げるようになったら、お前の給金をあげなきゃな」
今の俺は帝国に養われている身分で、自分の稼ぎは少ない。
小遣いの額は国務省が設定して皇帝が決定する。
父親は俺には興味がない人だし不当に少ないわけじゃないから、おそらく国務省が規定通りの額を支給しているんだろう。
毎年支給される分だから今は節約して貯めておきたいというのが本音だ。
もっとグレードの高い装備を用意できたのにやらない理由である。
「恐れ入りますが、私のためではなくあるじ様のためにお使いいただければ」
ジーナは恐縮し、遠慮がちに申し出てきた。
彼女の性格ならそう言うだろうなと思う。
「いらないなら無理に受け取らなくてもいい」
ここは譲歩しよう。
今の段階でどんどん俺が成長していくって、彼女に予想できるとは思えない。
ラスターはこれまでがこれまでだからな。
ジーナが頭を下げた瞬間、部屋のドアが乱暴に開かれる。
この時点で開けたのは兄弟の誰かだろうと予想できた。
父上なら自分で開けないから臣下がていねいに開けるだろうし、母上でも同じだ。
「臭いにおいがするなぁ」
あいさつもせず侮蔑の声をいきなり放ってきたのは次兄のロイドだった。
長い金髪をロールにしたなよなよしたふくよかな男性である。
本人は文官志望ということで体力はないが、芸術には明るくて芸術家のパトロンとしてそれなりの地位にあるらしい。
「ならここに近づかないほうがいいと思いますが」
と俺は反論する。
不遇な弟であっても身分は同じ皇子なので、この程度は言えるのだ。
「出来損ないが生意気言うな!」
ロイド兄は一喝するが、かん高い声なので迫力がない。
すごまれてもシュールなだけで怖くないんだが、黙って恐れ入っておこう。
俺の野心や計画はまだ知られたくない。
「出来損ないのくせに魔法書を読んだり、どこかに遊びに行ったりしているのか?」
「ええ。兄上もご一緒にどうですか?」
断られるのを承知で提案してみると、案の定激怒された。
「ふざけるな! なぜ貴様と一緒に行動せねばならぬ?」
ほんと何しに来たんだよ、この人。
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