第28話「スライム一掃」

 ヌルヌル回廊は名前の通り床がヌルヌルしているところがある。

 最初、スライムか不定形モンスターかと思ったが、単なる水分らしい。


 だから水を好むモンスターがわくようになったんだろうか?

 もっともスライムは種によって属性と好むものが変わるのだが。


「スリップ」


 続いて出てきたスライムにスリップを仕かけ、同じ要領でジーナが仕留める。


「スライムが続けて出てくるということは、おそらく他の水棲モンスターはこの階層にはいないな」


 と俺が言うとジーナはこくりとうなずく。


「ええ。スライムと他のモンスターは相容れないと言いますから」


 理由は簡単でスライムは他のモンスターのエサとなるコケやカビの発生を、抑えてしまう特性を持っているからだ。

 

 しかも同レベル帯のモンスターの攻撃が通りにくいというおまけつき。


 ダンジョンだと経験値とドロップ目当てに狩られるスライムだが、他の場所だと放置される場合が多い益虫、益獣ならぬ益モンスターだ。


 ジーナだってダンジョンの外だとスライムは狩らないように進言してくるだろうな……例外を除いて。


「一階はスライムしか出ないのか」


 スライムのローブが出たんなら、ぶっちゃけスライムに用はないんだが仕方ないかなぁ。


「……スライムはコケとかを食べる習性があるから、コケを集めて置いておけば集まってくるんじゃないか?」


 ふと思いつくとジーナはこくりとうなずいた。


「コケを集めて一か所に置いておきましょうか?」


「ああ。一か所に集まっていればサンダーでまとめて倒せるからな」


 サンダーは範囲攻撃には分類されていないが、水属性や水が多い場所だとダメージ判定が拡散するという特性がある。


 それを今回使わせてもらおう。


「私がやるので、あるじ様はお休みください」


 ジーナはそう言って一人でせっせとコケを集めていく。

 まあ皇子としての立場もあるし、俺が働いたら彼女の立場がなくなるのだ。


 言葉に甘えさせてもらって魔力の回復時間にあてよう。

 

 ジーナが両手に抱えるほどのコケを置いて、回廊の広間に並べ置いて離れたところで様子を見る。


 時間が経つとスライムが一匹、また一匹と集まってきて十匹くらいになってコケに群がった。


 こっそり近づいて俺は彼らに魔法を放つ。


「サンダー」


 雷属性に弱いうえに密集していた彼らはまとめて倒され、ブローチが震えた。

 今のでレベルが8まであがったのには少し驚く。


「これをあと一回やればレベル10になれそうだ」


「私も今のでレベル17になりました」


 俺の言葉を聞いたジーナはおずおずと報告し、二人で微笑をかわす。

 

 

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