第27話「ヌルヌル回廊」

 ヌルヌル回廊は宮殿から見て南西に位置し、馬を走らせて一時間ちょいってところか。


 灰色の石の屋根に赤い壁はホコリが被っていて、歴史を感じさせると同時に薄汚れた印象を受ける。


 帝国が興る前に滅びた国の城があったが、それは朽ち果ててダンジョン化してしまった回廊だけが残った──という設定(れきし)になっているらしい。


 ここに出現するモンスターはジーナとの会話に出たように水属性が中心で、スライムなどが出る。


「さあ行こう」


 声をかけるとジーナは俺を守るように前に立ち、回廊の中に入っていく。


 中はランタンがかけられていて明かりが灯っていて、何人か探索者もいるようだ。


 俺とジーナの服装を見て物珍しそうにしたものの、声はかけてこなかった。


 見た目的には金持ち息子の道楽にしか思われないんだろうな、という自覚はある。


 だから絡まれる可能性も一応考慮はしているが、みんな貴族に因縁をつけるリスクを想像できる人ばかりのようだ。


 原作を主人公サイドでプレイした関係上、帝国全体に悪いイメージがあったんだけど、一般人はそうでもないのかも。


 なんてな……今の俺にはまだ余裕があまりない。


「あるじ様」


 ジーナの声に意識を切り替え、前方に青色の流動体ボディのモンスターを確認する。


 うわさのスライムだ。


 ゲームによって強さが変わるらしいが、この世界のスライムは出てくる場所によって強さが違う。


 まだ物理攻撃無効スキルなどは持っていない雑魚モンスターだ。

 

「俺がスリップを使おう」


 雷魔法を使えばいいとジーナは思っていそうだったが、スライムは普通にスリップが利くので魔力の消費を抑えるためにもスリップでいこう。


「スリップ」


 床に仕かけたところにスライムは前進してきて、つるっと滑ってこちらにスピードを増した状態でつっこんでくる。

 

 スライム自身はパニックになっているが、ジーナはあわてず騒がず短刀の一撃で仕留めた。


 スライムは上の円形になっている部分の一点にコアがあり、一撃で仕留めるならここを突くのがいい。


 強くなって物理攻撃無効化されると、使えなくなるからこそ厄介なんだが、今は割愛しよう。


 スライムも群れを作るタイプのモンスターだから、一匹出たら他にもいると思っていたほうがいい。

 

「あるじ様」


 ジーナはドロップアイテムを拾って見せてくる。


「どうやらスライムのローブを手にしたようですが、いかがいたしますか?」


「スライムのローブか」


 錬成して強くなれば物理攻撃への耐性がよくなるんだよな。

 今だと弱い防具だけど、いずれ使うかもしれない。


「一応とっておいてくれ」


「かしこまりました」


 スライムのローブをいきなりゲットとはちょっと幸先がいいな。

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