第18話「ひと休み」
「あるじ様、よろしければ食事を召し上がりますか?」
とジーナが申し出てくる。
言われてみれば時間的に昼飯くらいでもおかしくないのか。
強くなってきたので昼飯を食べる余裕が生まれたわけだな。
そう考えて達成感を味わっておこう。
「こちらへどうぞ」
洞窟に背中をあずけようとしたところでジーナに誘われ、道の脇の空きスペースに移動する。
ジーナは『アセット』から黒い敷物を取り出して、地面の上に敷く。
「あるじ様、いらっしゃいませ」
彼女のすすめに従って腰を下ろす。
そしてジーナは飲み物が入った白いポッド、白いグラス、白い皿、それから携行食を取り出した。
軽いピクニックみたいな状況になっていて、場違い感がすごいか気にせずにスルーしよう。
パンにビスケット、ジャガイモを揚げたもの(原作ではフライドポテトという呼称が使われていなかった)だ。
携行食と言っても今回のは単に持ち運びを優先しただけのラインナップだと言えるだろう。
アセットなら冷蔵庫や冷凍庫の機能を持ち合わせているので強い。
さすがにアツアツというわけにはいかないが、それでも作ってさほど時間が経っていないような味を楽しむことができる。
挙げたジャガイモは食べやすいよう細く切られていて、塩がきいていない以外はフライドポテトだと言えた。
ちょっと物足りないが美味いことに変わりない。
「全部ジーナの手作りか?」
「はい」
ジーナがこくりとうなずいて俺の顔色をうかがう。
「美味いな」
ジャガイモもビスケットも、乾パンも。
前世と比べたらやや味気ないが、俺の現状を考慮すれば充分ごちそうだと言えるだろう。
「お気に召して何よりです」
ジーナは安堵の笑みをこぼす。
「パンも美味い。ビスケットも美味い。俺はいい臣下を持ったかもしれん」
褒め言葉を並べると彼女は感極まった顔で、目に涙を浮かべる。
「ありがたき幸せ」
そして指でそっとぬぐう。
忠誠心高すぎだろ……と思わないでもないが、彼女の美点だ。
ジーナはその後そっとお茶をカップにそそいでくれる。
帝国でのお茶と言えば基本的に紅茶なので、やっぱりピクニックでもやっているような気分になった。
気分転換に適しているのは事実なんだが。
食後にもう一度お茶をそそいでもらい、のんびりと空をあおぐ。
空は見事に晴れ渡っていて、青い光を放つ太陽が浮かんでいる。
日本とは決定的に違うと思われる理由の一つだ。
青い太陽は神王の長男セルリアーデルが司り、春から夏にかけて帝国や王国で見ることができる。
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