第15話「魔法を覚える3」
図書館に行って再び魔法書を借りる。
中で読んでもいいが、他の帝族に遭遇して不愉快になるリスクを考えれば部屋に持っていこう。
一応帝族のはしくれなのでたいていの本は持ち出し自由だ。
俺が選んだ攻撃魔法はサンダーである。
攻撃スピードが速く威力が大きい。
欠点はと言うと、ファイアやアイスと比べて応用性が低めな点と、同属性の高ランク魔法を覚えるレベルが高めだということか。
ラスターの場合才能が乏しいから、この辺はそこまで気にするよりも使い勝手のいい魔法を覚えるほうが先決だ。
原作だと一つの属性で固めるメリットなんてなかったという理由もある。
「属性得意」という称号を取れさえすればそれでよかった。
サンダーを覚えたところで練習したいんだが、問題なのはこの点だろう。
将来的に帝国から逃げ出すためには、俺が強くなっているのをできれば周囲に知られたくない。
魔法書を読んでいるだけなら「何の才能もないダメ皇子が魔法に憧れている」と思われるだけですむ。
だが、魔法を覚えているところを見られてしまうとちょっとまずい。
あいつらは俺のことを馬鹿にしているが、それは俺を発奮させようとしている遠回しな愛情ってわけじゃない。
父親である皇帝はわからないが、他の奴らにとって俺は無能のままでいるほうが都合がいいはずなんだ。
そこで俺はジーナに相談してみる。
「人目を忍べて魔法の練習ができるいい場所を知らないか?」
彼女は俺個人に仕える侍女だからこそ、俺が知らない場所を知っている可能性があった。
主人公サイドなら俺だってもっと知識を使えるんだが、大して掘り下げもなかった序盤の悪役だからな……。
「それでしたら私がいただいた部屋はいかがでしょう?」
ジーナの提案はぶっ飛んでいて意表をつかれる。
「お前の部屋はたしか俺の部屋から少し離れていたんだっけか」
使用人の待機部屋が主人の近くなのは帝国だと普通だった。
「あそこなら誰も来ないのでうってつけかと」
ジーナは本気で言っている。
「魔法の練習をすると、部屋が荒れるぞ?」
上達したならわからないけど、初心者だと天井や壁に当てるくらいは常識だと思う。
残念ながら今の俺じゃ壁や天井を壊すだけの威力は出せないだろうがな!
「あるじ様のお役に立てるなら何の問題もありません。それに私は部屋で寝るだけですから」
ジーナは真剣な顔で話す。
俺の役に立てるなら、自分の寝室がどうなろうとかまわないという覚悟が伝わってくる。
「わかった。そうしよう」
代案を思いつかない以上使わせてもらおう。
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