第13話「権威は身を守る手段」

 次に現れたのは杖を持ったコボルトメイジと、弓を持ったコボルトアーチャーだった。


 コボルトはゴブリンと違って、すぐに偵察のレベルが上がるんだよな。


「あるじ様」


 ジーナがちらりとこっちを見て問いかけてきたのは、どうするか判断をあおぐためだろう。


「コボルトアーチャーを頼む」


 俺は魔法使い職なので、魔法攻撃に対する耐性はそこそこある。

 一方で弓矢という物理攻撃は、食らった場所次第では即死コースだ。


 俺にとってより危険な相手を優先的に排除しろと指示を出す。


「御意」


 ジーナはうなずいた瞬間、姿が消えていた。

 そしてコボルトアーチャーが弓をかまえた瞬間、首を斬られて絶命する。


 杖をかまえたところのコボルトメイジはその有様にぎょっとして固まった。

 そりゃ目にもとまらぬ早業で味方が文字通り瞬殺されたらビビるよな。


 この点に関してはゲームじゃなかった部分だと思う。

 その辺は変わっているんだなと頭の隅にでも入れておこう。


 ジーナはと言うと、俺が何もしないと思って気を利かせたのか、固まったままのゴブリンメイジも倒していた。


 分析していて何もしなかった俺が悪いから文句は言えない。


 いろいろと考えながらでも戦えるようにならないと、たぶん今後ちょっとずつ難しくなっていくんだろうなぁ。


 ショイサの洞窟で気づけたのはラッキーだったと解釈しよう。


「あるじ様、差し出がましいかと思いましたが倒しておきました」


「ご苦労」


 我ながら偉そうな態度だと思うが、これくらいはしておかないと「ラスター皇子」の権威を守れない。


 今の俺が「皇子の権威」を失うのはかなり致命的リスクだから、意識的にふるまうくらいのほうがいいだろう。


 ねぎらった俺に対してジーナは、ドロップアイテムのコボルドメイジが持っていた杖を差し出す。


「こちらの品物をドロップしましたが、いかがいたしますか?」


 コボルメイジがドロップするのはたしか「コボルトロッド」だったな。

 しょせん序盤に手に入るアイテムで、ぶっちゃけ今の俺の装備より使えない。


 ただ、コボルトロットはとあるアイテムと錬成することで、「妖精の杖」といういいアイテムを作れる。


 ラスターじゃおそらく魔法使い系以外は職業適性なんてないだろう。

 魔法使い職にとっては妖精の杖はお世話になるアイテムだった。


「一本はとっておけ」

 

「かしこまりました」


 ジーナはちょっと驚いたように目を開いたが、逆らうことなくアセットに収納する。


「コボルトは次は大勢で来るかもしれないから、今日は一度引き上げようか」


 あくまでもここはショイサの洞窟だから、ジーナ一人なら返り討ちにできるだろうが、俺が死ぬ。


「御意」


 ジーナはうなずいて従った。

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