第12話「コボルトに初挑戦」

 スリップを三回使ったところで魔力切れになってしまった。


「ゴブリンがそろそろ警戒する頃だ。一度ダンジョンの外に出よう」


「かしこまりました」


 魔力切れになった魔法使いはただの役立たずでしかない。

 もっとも今の俺は元々役立たずなんだが。


 ダンジョンの外に出たところでガラス瓶を取り出し、緑色のポーションを取り出して飲む。


 苦い薬草の味が濃く残っていてまずい。

 魔力回復量が低めの安いポーションだから仕方ないことだ。


 魔力回復量が高いものを今の俺が飲んでも何の意味もない。


 あー、強くなりたいなぁ……これが強くなれるタイプのキャラだったら、単独行動でタイムアタックができたのに。


 嘆いても無駄だから与えられたカードを使って戦おう。


 俺本人は弱いがジーナというエース級のカードを持っていると考えれば、充分救いがある。


 入り口の右に移動して、岩の壁に背をあずけた。

 人の出入りがそこそこあるので、どかないと邪魔になってしまう。


 こんなことで無駄に周囲の敵意を買ってる場合じゃない。

 水をついでに飲んでからジーナに指示を出す。


「今度はコボルトが出る方面に行ってみよう」


「かしこまりました」


 彼女は大きくうなずく。


 コボルトはゴブリンより手強いが、彼女にとっては取るに足らない相手だからだろう。

 

 ゴブリンが出るのとは逆の通路を進んでいくと、前方からたいまつを持った犬頭の人間が姿を見せる。


 体のサイズはゴブリンと同じくらいで、奴こそコボルトだった。


 元々コボルトはいたずら好きの妖精が獣の神を怒らせてしまい、頭部を犬に変えられてしまったという言われている。


 姿が変わって妖精の世界を追われて妖精としての能力は退化したが、手先の器用さと知能は変わっていないらしい。


 コボルトはゴブリンよりも知能が高いので、スリップを当てるのは難しいだろうなと思っていたら、


「はぁ!」


 ジーナが俺の目にもとまらない早業で片づけてしまう。

 おそらく短刀でコボルトの喉を切り裂いたのだろう。


 やはり彼女は強い。

 コボルトは何も落とさなかったが、まあ仕方ない。


 コボルトはゴブリンよりも強いわりに、ドロップするアイテムの種類は少ないのだ。


 レアな種であるコボルトメイジ、あるいはコボルトウォリアーだったら落としやすいんだが。


 測定ブローチが振動したので、俺は自分がレベル3になったことを知る。

 ここまでは順調だな。


 レベル3になってもそれだけだと俺一人でコボルトには勝てないままだから、引き続きジーナに養殖をしてもらおう。


 戻ったらまた魔法書で魔法を覚える。

 地味なワンパターンこそ俺が強くなる手段なんだ。

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