第10話「チリも積もれば」

 夕食も自室で一人で食べるのが日課なので、ジーナが用意してくれた鳥肉のステーキ、ジャガイモのパンケーキを頬張る。

 

 腐っても大国皇子の食事だけあって、使われている食材はいいし数も多く、美味しかった。

 

 最後のはジーナの努力のたまものだと思うが。

 

「売却金額はどうだった?」


 初期ドロップだから大して額にはならないだろうけど、チリも積もれば山となるように、予算の足しにはなるだろう。


「銀貨二枚でした」


 ジーナは淡々と報告する……銀貨二枚か。

 原作の基準を適応するなら日本円で2000円くらいになるんだっけ?


 スズメの涙だが、今の俺は弱小だから積み上げることが大事だ。

 一日2000円稼いだとして、10日なら2万円だ。


「マジックポーションを買いたいと思っているんだが、価格はいくらだ?」


「下級ポーションなら一本銀貨一枚になるかと。あるじ様なら魔法省から融通されると思いますが」


 彼女は質問に答えた後、不思議そうに問い返してくる。

 たしかに今の俺はまだ魔法省から便宜を図ってもらえるだろう。


 物価を今のうちに確認しておいたほうがいいはずだが、使えるものは使っておこうか。


 縛りプレイをやる余裕なんてないんだから。


「そりゃそうだな。明日の探索行くまでに、何本かもらっておいてくれ」


 ジーナが俺専属のメイドだとは宮廷にも知られているので、俺自身が受け取りに行く必要はない。


 むしろ俺がいないほうがいい可能性すらありえる。


「かしこまりました」

 

 ジーナは返事をした後、こっちをじっと見て来た。


「ポーションをお飲みながらダンジョン探索をなさるおつもりでしたら、携帯食の準備もいたしましょうか?」


「あ、そうだな」


 探索中の食事をどうするか、すっかり忘れていたな。

 今日はこれからのことで頭がいっぱいで、飯どころじゃなかったし。


 俺が食べないとジーナだって食べないので、彼女には悪いことをしてしまった。


「ちゃんとお前の分も用意するんだぞ」


 じゃないと俺の分しか用意しない可能性だってあるのが、ジーナというキャラクターなのである。


「かしこまりました。恐れ入ります」


 気を回したことへの礼だろうか。


「何か希望はございますか?」


 携帯食の希望と言われても、保存がきくものしか無理だからなぁ。

 あ、【アセット】があるからある程度は大丈夫か。


「肉と干し果物がいいな」


 もっとも手早く食べられるものじゃないと、ダンジョン探索じゃ不利になるだけなので制限があるのは変わりない。


「はっ」


 返事をしてジーナが下がると大きく息を吐き出して寝転がった。

 今日はひとまず無事に終わりそうだが、明日はどうだろうか。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る