第8話「魔法を覚える」
城に戻ったところでジーナは馬を馬丁にあずけて、図書館に向かう俺の後に従う。
宮殿にある図書館には一般人だと買わなきゃ読めないどころかそもそも買えない魔法書が並んでいるし、帝族なら誰でも自由が読めるのだ。
どれだけ嫌われ期待されていなくても、身分を剥奪されていない以上は俺も帝国皇子で帝族が持つ権利を使える。
ジーナが最初から仲間にいることと並ぶ、ラスターに転生した二大メリットだ。
ラスターになるメリットなんて二つしかないとも言う。
ある程度実力をつけるまでは剥奪されないように気をつけないとな……原作がはじまるまではきっと大丈夫だろうと思うが。
図書館は宮殿の南の方角にある独立した建物で、何人かの官吏が司書として勤務している。
俺たちが入って来たことで全員が怪訝そうな顔をしたが、うち一番若い司書が愛想笑いを浮かべてやってきた。
現状ラスターがどんな立場であろうと、一介の官吏ふぜいが皇子を無視するなんてできるはずもないのだから、彼らも大変だと思う。
「ラスター皇子、どのようなご用でしょうか?」
図書館に一番縁がなさそうな人物を見た、という表情を消して彼はたずねる。
「レベルアップしたから魔法を覚えたくてね。状態異常系の書物を持ってきてくれ」
「かしこまりました」
司書が驚きを浮かべたのは一瞬で、気持ちの切り替えの早さと顔の筋肉のすごさに感心した。
そして青い背表紙の魔法書を一冊持ってくる。
「レベル2から4ほどの魔法が書かれた書物はこちらになります」
「ああ」
俺が選んだのはスリップの書物で、残りはジーナに持ってもらう。
あいてる椅子に座って読む。
この世界だと必要なレベルに達していて、適性のある職業についていれば、対応した書物を読むだけで魔法を覚えることができる。
前世の記憶が残っていて、なおかつこちらの世界で努力らしい努力したことがない人間にはありがたいシステムだ。
「スリップでよろしいのですか?」
読み終えた書物を閉ざしたところでジーナに問われる。
「レベル2の魔法は基本的に単体を標的にしたものが多いからな」
数少ない例外がスリップで、位置を上手く選べば複数のモンスターをひっかけることが可能だ。
スリップでコケた相手をジーナが倒せば、今までよりももらえる経験値が増えるのである。
床や壁に働きかける魔法なので、宙に浮かんだり空を飛んだりする敵には効果がないが、そんな奴らと戦う予定はしばらくないからかまわない。
最初はゴブリンで、次はコボルトが無難だろう。
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