第7話「養殖2」

 背後からの奇襲に備えて壁に背中をあずけて待っていると、弓を持ったゴブリンレンジャーと槍を持ったゴブリンソルジャーが姿を見せる。


「瞬殺します」


 ジーナはまたしても瞬間移動としか思えない速さで、二匹を片づけてしまう。

 俺が見えたのは倒してふり向いて、二本の短刀をかまえているところだった。


 ドロップアイテムは槍だけだったのでジーナがしまう。

 三匹倒してドロップアイテムが二つなのは順調な証だ。


 一人だったらすでにレベルアップしてるだろうけど、二人でしかもジーナに全部倒してもらってるからな。


 欲を言えばコボルトのほうが敵としては旨みがあるんだが、コボルトはゴブリンより強いしなぁ。


「あるじ様、このままゴブリンを狩りますか?」


 同じことを思ったのか、ジーナが確認してくる。


「それが一番安全だろうからな」


 と彼女には答えておいた。

 おそらく次もゴブリンが一匹か二匹だけ出てくるだろう。


 レベルアップするまでくり返す。


 何とも地味で退屈な作業だが、俺が死なないためには絶対に必要なものだから我慢するしかない。


 レベル2になったら魔法書を使って魔法を取得しよう。


 置き物でしかない現状が少しは改善して、レベルアップ速度が多少はマシになるはずだ。

 

 次にやってきたのはショートソードと円状の盾を持ったゴブリンソルジャーだった。


 向こうがこっちに近づいた瞬間、ジーナは床を蹴って襲いかかって首を切り裂いてしまう。


 圧倒的な力の差もここまで来ると軽く芸術的だとすら言える。

 なんて考えていたら測定ブローチが振動して俺のレベルアップを教えてくれた。


「ジーナ、ここまでにして引き上げよう」


「はい」


 ジーナはドロップしたショートソードを拾って、すぐそばまでやって来る。

 

 ゴブリンソルジャーは群れの主力で、こいつが姿を見せたということは仲間たちが戻らない理由について群れが警戒しはじめたということだ。


 今の俺がいる状況だとジーナの立ち回りが不利になってしまう。

 レベルも上がったことだし、一度洞窟の外に出てしまったほうがいい。

 

 ダンジョンモンスターの警戒心は外に出て時間がたつとリセットできる。

 その間、一度城に戻って魔法書を覚える作業をやればいい。


 馬で往復するので今日のところはもうダンジョンに戻るのが難しいが、ゴブリンの警戒心は確実にリセットされる。

 

 洞窟の外に出たらジーナが馬を取り出してまたがったので、彼女に手助けされて馬の上になった。


「行き先はいかがなさいますか?」


「城に戻ろう」


 今の俺が使える魔法書は城にしかないからな。


「はっ」


 ジーナは返事して手綱を動かし、馬を走らせる。


 

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