第2話「ラスター皇子2」
ジーナが添い寝してくれたからか、とてもいい匂いだったおかげで朝起きた時頭がすっきりしていた。
「おはようございます、あるじ様」
ジーナは俺より起きるのが遅いなんてことがあるはずもなく、隙のないメイド服を着てあいさつする。
「ああ、おはよう」
「朝食をお持ちいたしますね」
ジーナは一礼して部屋を出ていき、すぐにワゴンを押しながら戻ってきた。
「本日はフレンチトーストとオムレツにございます」
異世界だったらツッコミを入れたくなるような朝食メニューなんだけど、ここは日本人が作った異世界風ゲームの世界なんだよなぁと思う。
「ありがとう」
礼を言うと彼女は驚いていた。
もちろん料理はジーナの手作りだろう……ラスターのために食事を作ってくれるなんて、城には彼女くらいしかいない。
寝ている間に記憶の整理がある程度進んだらしく、今のラスターは十二歳で早くも原作通りの嫌われ者になっていると知っている。
まあジーナがすでにいるってのがせめてもの救いだった。
ラスターにとって唯一絶対の味方だと言える存在だし、戦力としても優秀である。
これから俺が処刑されるバッドエンドを回避するためには、ジーナの存在は必須だった。
何しろ彼女と違ってラスターは弱い。
原作でも下級職のメイジにしかつけない上に使える魔法も少なく、ジーナにお守りされっぱなしだった。
帝族の中で地位が低く、誰にもまともに相手にされないのには相応の理由があるのだ。
……バッドエンドを回避するためにはまず強くなりたい。
そして原作主人公を敵に回さず、できれば向こうに味方だと認識されたかった。
ジーナは帝室じゃなくて俺個人に忠誠を誓っているだけなので、俺が帝国を裏切っても何も言わずつき従ってくれるだろう。
他の面子と違って彼女はこの辺を心配しなくて済むのが楽だ。
美味しく食べた後、彼女に相談する。
「俺って十二歳になったんだからダンジョンに入れるよな? 手ごろなダンジョンを知らないか?」
帝国では十二歳からダンジョンに挑戦ができるのだ。
本当は隠しダンジョンとか行きたいんだが、今の俺が行っても死ぬだけである。
まずは隠しダンジョンなんかにも行けるようにレベル上げをしないとな。
「ダンジョンですか」
ジーナは目を丸くして驚いた。
そして次の瞬間俺の目の前に来て、どこからか取り出した担当を首に当てる。
「誰だ、貴様は? あるじ様ではあるまい」
彼女の緑の瞳は底冷えがするほど冷たく、濃密な殺気を浴びせられた。
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