【完結】転生皇子が原作知識で世界最強
相野仁
第一章
第1話「処刑される未来の皇子ラスター」
ディスティニースレイヤーというゲームは美麗なグラフィックと、痒いところに手が届かないストレスさが話題になったRPGゲームだ。
ストーリーは単純に世界征服を企てて悪魔の力を使おうとする帝国と、それに対抗する王国という構図だったはず。
この設定で何で仲間にならないんだって文句をつけたくなるキャラがいたり、ここでセーブさせてくれよと舌打ちする展開が多かった。
売れたのは美形キャラクターのおかげという風評が主流だったし、俺も実はそう思っている。
美少女キャラクターで男性プレイヤーを集め、何人ものイケメンキャラクターを前に出して女性客の心も掴んでいた。
……何でこんなことを突然言い出したのかと言うと、俺はどうやら悪の帝国の皇子ラスターに転生してしまったらしい。
寝ぼけてベッドから落ちて後頭部を強く打ったショックが原因というあたり、いかにもラスターらしいなと鏡に映った金髪に目つきの悪い青目を見ながら思った。
ラスターは帝国の第四皇子であり、ゲームの序盤のうちに破滅する初期の小悪党ポジションだった。
おそらくだがプレイヤーに「悪の帝国の帝族はこんな感じですよ」と紹介する役割だったのだろう。
よりにもよってラスターかよ……まだ死にたくない。
見た目から推測するにたぶん今は十二歳くらいなのだろうけど、このままだとあと五年くらいで死ぬ。
それも主人公にちょっかいを出して帝族の恥として処刑されるか、王国に捕まって処刑されるかの二択しかない。
初期の小悪党だけに能力が低い嫌われ者で、味方と言えるのは一人くらいしかいないんだが。
「ラスター様? どうかなさいましたか?」
女の声が聞こえ、一人の少女が入ってくる。
銀色の髪に幼い美貌に黒い犬のような耳を持った少女の名前は、反射的に口から出てきた。
「ジーナか」
「はい」
ジーナはラスターが気まぐれで拾ったワーウルフの少女である。
忠臣の鑑というべきキャラクターで彼がどんな未来に進もうと決して裏切らない。
ラスターが処刑されると主人を救えなかった自分を責めて、必ず自殺してしまうのだ。
彼女はラスターと違って能力が高くてプレイヤーを苦しめるし、忠誠心が高い美少女なので熱心なファンがいる。
痒いところに手が届かないと言われる理由の一つが、「ジーナは絶対仲間にできない」ことだった。
当時俺も不満だったが、ラスターになってしまった今の俺にとって彼女の存在はとてもありがたい。
裏表なくひたすらラスターに尽くし、彼が死ねば自殺する彼女だけは信用できるからだ。
はっきり言って彼女以外ラスターに味方はいない。
「一緒に寝るか?」
ごまかそうとして声をかけるとジーナはじっと緑の瞳で俺を見つめてうなずいた。
「あるじ様がお望みなら」
忠誠心のかたまりである彼女が拒否するはずもなかった。
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