「もう行くの?」


「仕事があるんで」


「せめてお風呂ぐらい」


「帰って自分の部屋で入ります。鏡で歌詞をゆっくり見てみたいし。長居すると帰れなくなりそうで。あの。彼は」


「部屋にこもったわ。シンセの音が聞こえるから、たぶん作曲に入ったんだと思う」


「あなたは、いいのかい。それで」


「まだ、分からないです。帰り道に失恋ソングと恋愛ソングを流しまくって、自分の気持ちを整理しようと思います」


「演歌は?」


「演歌ですか。ちょっと待ってください。あえと、機材は」


「先生は最新のりんご持ってるわよ」


「ああ、これね。どうぞお」


「うわほんとだ最新式。私のおすすめいくつか送ります」


「ありがとうねえ」


「お代のかわりです」


「今ドラム呼んだから。駅まで送ってくれるわ。どうでもいいけどドラムとも病院で会ったのよ」


「えっ」


「ドラムは肝臓がわるかったらしくて。ステージフォーがなんだとか言ってたわね。気合いと根性で治したらしいけど」


「男の人に送ってもらうのは」


「彼、生物学的には女だけど」


「あ、え?」


「先天的性不一致ねえ。彼はめちゃくちゃたのしんでるわよお。男と女両方楽しめるのはすばらしいって」


「どうも。歩きの巫女さん。駅まで送りに来ましたよ。あっPAまた全裸になってる」

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