風景と臭い、音などがリアルにイメージできる作品

言い回しが歯切れよく、絶妙なバランスで、とても読みやすい作品です。
始めは退廃的な、堕落した男を少し描いているのですが、純粋な心と真の実力を持ったカッコイイ男に認識が変わっていきます。
身分と権力を対比して、颯爽とした行動を取る主人公が、とても印象に残りました。
盗賊というジョブ自体が、器用貧乏で、戦士や魔法使いに劣るイメージがありますが、その優秀さを浮き彫りにし、魅力的なキャラクターを描き出しています。
貴族の方が、よほど薄汚く、節操がない、という深いテーマと、純愛を貫く主人公の在り方が小気味良く、とても面白かったです。
この作品から、間接的に着想を得てファンタジーの新作の外伝を一本書きました。
ちなみに盗賊とか奴隷は登場しません。
自分は、構想に煮詰まって「どうしよう」と迷ったまま書き始めます。直観を信じて、その場で展開を考え、何度も分岐点をねじ伏せながら、力技で1本にまとめてしまう感じです。
始めに構想を考え過ぎると、頭でっかちで薄味なものができる気がしています。
作品の良し悪しは、論理を超えたところにあると思いたい、という考えもあります。

,この作品は、心の底に高潔な精神を持った主人公を描いているのに、少しも押しつけがましくなく、読み終わると(リーダーで聞き終わると)爽やかな後味が残ります。
私は執筆しながらリーダーで小説を聞いています。
アウトローな主人公を扱うほど、心の中の純な部分が描き出されるのは、逆説的で、読者に深く哲学をことになるのだ、と改めて認識しました。
他の作品も拝見いたします。