花火

ロボ太郎

第1話

ある流行り病で花火大会ができなくなった。


個室花火


それが花火組合が新たな雇用創出先として編み出した苦肉の作であった。


言ってしまえばカラオケの花火版で、ニューノーマル花火のver.1だ。


個室に入った客が、そこから花火を見れるようにしたサービスである。


サービスはver.改修を進め、業界内での最新はver.5.6と呼ばれている。


ver.1から順を追って見ていこう。


最初のサービス(ver.1)は、個室内でバーチャル花火を流したが、大不評ですぐに終わった。


「ただの映像なんて家で見れる」


というのが、その理由だった。

その通りであり、改修が求められた。


ver.2では花火大爆発の空気を伝えるための空気圧調整弁が各部屋に設置された。


これでただの映像とは言えまい。


こちらはver.1と比較して好評だった。


イメージと違って、花火は実は音と振動が大事だったらしい。


フェスやクラブの楽しみ方と、昔の花火の楽しみ方は、近かったのではないか。


なんて賢ぶった先生の呟きがまとめられていた。


空気圧調整弁による窒息死事故も度々起こったが、 あまり気にされなかった。

(流行り病の方が死んでいたので)


ver2.は規制されたわけでも、人気がなくなったわけでもなく、別の理由から廃れた。


花火師の雇用創出につながらなかったのだ。


元々花火師協会が始めたプロジェクトであり、雇用維持のために政府から補助金も出ていたのだ。


雇用創出にならないなら打ち切るしかない。


次に生まれたのは、住宅近隣での規制緩和型花火(ver.3)だ。


吉祥寺や新宿のような、街中で花火をぶちあげるのである。


これも事実上個室から花火が確認できる。


それぞれがレストランの窓や、ホテルの窓から花火を見るのである。


街中どこでも花火を上げられるようになったので、様々な場所から花火が鑑賞出来るのだ。


もちろん大人気サービスとなった。


街中で花火を上げるのだからもちろん事故も起き、人も死んだが、あまり気にされなかった。

(流行り病の方が死んでいたので)


ver.4は業界内で言われているというよりは社会で呼ばれてから業界内に定着した呼び名だ。


街中花火のスリルに慣れてきた若者が、もっと興奮出来る方法を試し出したのだ。


花火を打ち上げる発射台は連結されており、穴がたくさん開いた、大きな箱として設置されている。


その現場に侵入して、箱の上、つまり、花火が打ち上げられる真上を、走り回るのだ。


発射される花火台の上を飛ぶので、タイミングが合わなければ、もちろん大怪我は免れない。


その危険行為をyoutubeに上げて人気を得る者達が出てきた。 当然、社会問題となった。


花火組合も責任を追及されたが、不法侵入されている側でもあるので、追及は強くなかった。


花火組合自身はというと、花火が若者から注目されているので、侵入を強く阻止もしていなかったのだが。。


死者もたくさんでたが、やはり世間では、あまり気にされなかった。

(流行病の方が死んでいたので)


現在ver5.シリーズは更に過激だ。


一見死んでしまうのでは?という使い方をされ始めたのだ。


最初は大型の打ち上げ花火を人に向けて打つ、と言ったところから始まった。


当然事故や批判もあったが、流行り病で鬱々としている社会だ。


元気付けるためにはこのぐらい必要では?と擁護する声もあった。





おぉ、そろそろ時間みたいだな。


打ち上げ花火に人間を乗せてみるのがver.5.6での取り組みだ。


防火服とパラシュートを積んではいるが、どうなるかはわからない。


健闘を祈るよ!



ドンッ、、、ぴゅ〜〜〜〜

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花火 ロボ太郎 @robotaro_SF

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