写真オタクのアルバムには撮った覚えのない写真がある

YuU

僕のアルバムには撮った覚えの無い写真がある

 僕は写真が貼り付けてあるアルバムを見ながら昨日の記憶を思い出す。


「僕、こんな写真撮ったっけ?」


僕は写真をとる事が好きで自分が撮った写真は全てこのアルバムに貼り付けるはずなのだが、このアルバムには撮った覚えのある写真と撮った覚えの無い写真が貼ってあった。何回思い出しても撮った覚えがないのだ。でも前々からこういう事は毎日あるのでもう驚かない。


「てかやべ。今日も仕事あるんだった」


僕は独り言を言い、使っているコンパクトデジタルカメラとタオルと水筒を愛用している赤色のリュックに入れ家を出た。


僕は元々都会で暮らしていたが都会の街がうるさかったのでとある田舎に引っ越した。周りは畑だらけで虫の大きな声がよくするが都会よりも静かで自分好みの景色が沢山あったのでここに引っ越したのだ。ここからチャリで10分のところにある『今畑缶詰工場』で僕は働いている。


「おはよう!田中!」


「おはよう。真鍋、朝からうるさい」


「そうか?こんなもんだろ」


この声の大きい奴は真鍋隼人。俺と同い年で真鍋は僕と同じ『今畑缶詰工場』で働いていて同い年という事もあって仲良くなった。


「今日も仕事だりーなー」


「確かにそうだな」


「この暑さはきつい」


「でも多分都会よりマシだよ」


「え?そうなのか?」


「そうなんだ。確かヒートアイランド現象というのが都会ではあるらしいからな」


 そして真鍋と色々雑談しながらも工場に遅刻せずに着き、作業服に着替える。今日、僕がする仕事は缶詰の缶が凹んでないかの確認作業だった。


「おはよう田中君」


「おはようございます、工場長」


この人は今畑寿造。この工場の工場長だ。歳は60歳くらいだがとても元気で優しい人だ。


「昨日今日ときついだろうが頑張ってくれ。熱中症には気をつけてくれよ?」


「はい。ありがとうございます」


そう僕が言ったら工場長はそのままこの場を後にする。


 10時間後、今日の仕事が終わった。終わった頃には青かった空はすっかり鮮やかなオレンジ色になっていた。そしてその景色がとても綺麗だったのでリュックの中に入れてたカメラを持ちこの景色を撮る。


「お?今日も写真撮ってんのか?」


「ん?今日も?いやいや昨日は撮っていなかったろ?」


「いやいや撮ってたじゃねーか、確か…綺麗に咲いてたひまわりを」


え?その写真って確か今日の朝に見たアルバムに貼り付けてあった写真じゃ…そう思いながら真鍋が横にいながらも喋らずに別れお互いに「さよなら」と言いそのまま静かに家に帰った。


「考えても仕方ないか」


そう言って僕はひとまず自分のリュックを置き、カメラと財布を持ちコンビニへと向かった。今日撮ったオレンジ色の空の写真を印刷する為だ。


 

そして僕はチャリを使って15分程度でコンビニに着いた。田舎のコンビニは少ない為、物凄く時間がかかった。僕がコンビニの中に入ると


「いらっしゃい、田中君」


このご老人は今井美樹といってこのコンビニの店長である。僕はこのコンビニに毎日行っているので覚えられてるのだろう。何故毎日このコンビニに毎日行っているかは分からないが…


 僕は店内の端にある印刷機を使って写真を印刷した。


「今日も写真を印刷しに来たのかい?」


「え?僕は昨日ここで写真を印刷していたのですか?」


「覚えてないかい?昨日、物凄く綺麗なひまわりの写真を見せてくれたじゃないか」


え?何故皆そんな事を言っているのだろうか?僕は昨日写真を撮ってないのに


「じゃ失礼します」


僕はここから逃げるようにコンビニを出た。


 そして15分後家に着いて風呂に入り、入った後は隣の人から貰った米を炊き、買い溜めていた冷凍食品をレンジで温めた。そしてご飯が炊き終えて、ご飯を大きな茶碗に入れその上にレンジで温めた冷凍食品の唐揚げを置き、その上にマヨネーズをかけて完成だ。名前は『田中スペシャル』としておこう。『田中スペシャル』を机に置いて食べながら今日撮った写真をアルバムに貼り付けた。10分で食べ終え、水で茶碗に付いたご飯粒やマヨネーズを軽く流し、洗剤をスポンジに付けて茶碗に擦り付けた。きちんと汚れを流せているか確認しそのまま歯磨きをした。歯磨きを終えるとそのままベッドにダイブした。


「あ〜今日も疲れた〜。明日は仕事休みだし写真撮りに山に行くか」


そんな風に独り言をした後、僕は静かに眠りについた。


***


 僕は元々写真には興味がなかった。でも綺麗な景色や植物が好きだった僕に父さんが15歳の誕生日プレゼントとして貰ったのが始まりだった。そこから僕は写真にのめり込み、僕が綺麗と思った景色や植物を撮っていた。


***


 僕はベッドから起きた。なんかとても懐かしいような夢だった。そう思いながらもベッドから体をだしそのまま台所に行った。顔を洗い、歯磨きも行った。そして昨日残ったご飯を昨日洗っておいた茶碗に入れ、レンジで温めた。30秒レンジの中で温め箸を持ち、机でご飯を食べる。机に置いてある自分が撮った写真を貼り付けてあるアルバムを眺めていると、撮った覚えのないオレンジ色の空の写真が貼り付けてあった。











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写真オタクのアルバムには撮った覚えのない写真がある YuU @mugifuwa1415

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