& prologue

「どうもどうも。こちらです」


「ありがとう」


 大臣。私服。ひとり。


「じゃ、パパラッチを撒きますので。目と耳を塞いで口を開けてください」


 大臣。言われた通りにしたのを確認し、後ろにコンカッションを投げた。


 派手な音。


 大臣の背中に手を置いて、骨伝導の要領で話しかける。


「はい大丈夫です。目を開けてください」


 大臣。こちらを向く。


「何をしたのですか?」


「企業秘密です。とりあえず、これでパパラッチも盗撮もなしです。ホテルに入りましょう。私の恋人が待っている」


 ホテル。ラウンジを上がって、部屋に入った。


「どうも」


 部屋の中。


「おまえ、コンカッション投げる前に何かさ、予備動作とかないわけ。まだ耳と目がおかしいんだけど」


「ああ、ごめんごめん。見てたのか」


「思いっきり見てた」


「こちらが大臣」


「あ、お初にお目にかかります。彼の恋人で、同業他社の殺し屋です」


「え、え?」


「彼のほうにも依頼がいっていますが、そちらは気にしないでください。彼自身が処理します」


「大臣。はっきり言いまして、俺はあなたを尊敬しております。あなたはちゃんと政治家だ」


「あ、ありがとうございます」


「彼、人をほめるのが趣味みたいなものなので。気にしないでください」


「い、いやあの、それ、それよりも、あなたがた、恋人って」


「ええ」


「付き合ってますが」


「うそ」


「え、なんで。どうしたんですか」


「いやちょっと立ちくらみが」


「鼻血出てますけど。はい。使ってください大臣殿」


「あ、ありがとうございます」


「なにこれ。おまえの依頼者もコンカッションくらったんじゃねえの?」


「おかしいな、投げる前に確認したはずだけど」


「あ、あの、ホテルということは、このあと、その、するんですよね?」


「は?」


「は?」


「あの、私、間に挟まっていいですか。わたし夢だったんです。イケメンふたりの間にその、挟まるのが」


「おいこの大臣あたまおかしいぞ」


「ああ。ちょっと予想外だわ。これは」


「おねがいします。大臣権限で。間に」


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殺し屋がふたり、女がひとり 春嵐 @aiot3110

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