第14話 デッドピースリメイク

 エンジニアメカニックポリス

砂漠を街に造りかえ、テクノロジーやマシンを開発した技術集団、通称EMP


自らも機械の身体で動く彼らは日々集っては世界の発展、向上について話し合いを繰り広げていた。


「本日も集まって貰って済まない。

私がENP代表のストラシュゼットだ」


「それ毎回聞かないとダメかぁ?

いい加減全員覚えたっての。」


「そうか、済まない」


「んだよ、謝るな気持ち悪りぃ。」

長髪の男が円状の卓を仕切っている、組織の人数はそれ程多くは無いが仕切るとなれば癖が強く手が掛かる。

現に名を名乗っただけでこれだ、長丁場の会場など至難の所業だろう。


「最近、回避機能をオフにして道路を滑走する者が増えている。強制とまではいかないが安全を保障しておきたい何か策はないか?」


「回避機能ってバイクの車輪とか人の脚に付いてるアレか、衝突を未然に防ぐっていう。事故は言う程起きてねぇだろ、自力でどうにかなってんだよ」

 言葉遣いからわかる、いかにも粗暴で荒削りな男カボルが机に脚を乗り出し組ませながら適当に言う。

「話を聞いてたか?

彼は安全を保障したいと言ったんだ、事故を可能性から削減したいといっている。話はよく聞いたらどうだ」


「あんだ優男?

常識代表気取りやがって生意気だな」


「お前が非常識なだけだカボル。

回避機能が元々無いお前には理解出来ない話かもしれないがな」


「あんだと?」「何だ」

「やめろ二人ともみっともない、会議は話し合いであり言い合いでは無い。

喧嘩するなら他所でやってくれ」

犬猿の仲裁をするのはリーダーではなくその補佐、あくまでも会議を優先し無駄を省く。筆頭よりもする事は多い


「うるせぇぞユニグマ、冷静なフリして余裕が無ぇんだよ。放っとけ!」


「人手不足なんだ、世界を造るにはただでさえ人が足りない。自分がどう映るかより、数をどれだけ保てるかだ」

世界を回すのは容易では無い。

少人数であれば、可動域にも直ぐに限界が生じる。ギアの能力を持ってしてもそれは同じ、ほんの少し表面が便利になるだけの事だ。


「ならもう動くな、後はオレがやる」


「誰だ⁉︎」

「てめぇどこから入った!」


「なんだ?

世界の創設者が侵入者も把握出来ないのか、終わってるなこの世は。」

分厚い防壁は耐久の代わりに、音や気配もぱったりと閉ざしてしまう。


「動くな、直ぐに捕らえる!」

「止まるのはお前だ」

ユニグマを稲妻が襲う。痺れる間に距離を詰めたポピラの腕が更に触れ、身体をショートし停止させる。

「なに..を、する気だ...?」

「言わないとわからないのか、副官の癖をして使えないな。」

胸を貫きギアを引き抜く、穴の開いた身体は完全にショートし床に落ちる。


「…感知の力か、何故使わない?

威勢の割にはしょっぱい能力だな。」


「てめぇふざけんな!」

全身を燃焼させ掌から火炎を放射する

「ほぉ〝プロミネンス〟か。

中々使える、今は持ち腐れだがな」

メイクの力で壁と床を檻に変化させカボルを拘束する。

設定は〝炎で溶けない硬い檻〟だ。


「何だこれ!さっさと出せ!」


「お前はいらない、歯車でいい。」

「がっ..!」

槍の右手が檻の隙間からギアを捉えて取り除く。中心に開く穴に先端を通しクルクルと回る歯車は酷く滑稽だ。

「二人目。」


「う、うわぁぁっー!」

「何処に行くマリオヘッド!」

カボルと言い合いをしていた眼鏡の男が奇声を上げて走り出す。目指すは出口、すこしでもここから遠くの距離へ


「逃すと思うか?」

「う、ひぃっ!」

出口の扉を開けた先に無数の犬が待ち構え男を喰らう。

「品が無いな、所詮は犬か。」

無残に砕けた男の破片の中からしっかりとギアを頂戴した。

「..〝湾曲〟のメモリギア

使い道があるのか、こんなもの。」

残すは筆頭世界のリーダー、無駄に長い名を覚えられる事は稀の事。当然ポピラも把握はしていない。


「お前は潔く斬ってやる」

「……」「どうした?」

じっと見つめる目に迷いは無いが、事柄を整理する、管理の視線を感じた。


「どうやって中に入った?

只の人間が入るのは確実に不可能だ」


「…只の人間?

オレはこうなる前、砂漠の時代に多くの人間と戦った。手段は幾らでも得たんだよ、心が削れ落ちる程にな」


「それにしてはシンプルだな

私の相手は一本きりの細い刀か?」


「これでも経緯を払ったつもりだ」

斬るではなく突く、元来目的はギアのみ。肩書きや名声は後回しだ。


「..脆いな。」

「お前の不意な点だ」「何?」


「確認の為か、必ず手を下す。

お前は己の腕を用いて人を討つのだ」

砕けた身体が溶解し液状に変わる。

怪しげな液体はポピラの腕に纏わり付き、徐々に体内に吸着する。

「なんだ、これは..⁉︎」


「水銀だ。

私の能力〝マディーストリーム〟身体を水銀に変えて流動的に操作する」

水銀は有害であり、体内に侵入すれば臓器や肺に異常をきたす。

機械の場合のそれは単純な構造にバグを引き起こし、不具合を生じさせる。

「ぐあぁっ..離れろ...!」

「私がここを離れても汚染は広がる。

不良品は治らないのだよ」


「いいから離れろ!」

「身体から光...自爆か⁉︎」

エクスプロードの爆破能力により、水銀を無理矢理引き剥がす。自身も多大なリスクを負うが内部の損傷を防ぐには、ある程度外部を傷つけ被害を抑える必要性があった。

「くっ、派手な事をしてくれる..」

ポピラの姿は無い、代わりにぽっかりと床の中心に穴が空いている。地中深くまで続いている程の深さ、恐らく外へ逃亡したのだろう。

「逃げられたか、直ぐに追わねば」


「ワンッ!」「ん?」

マリオヘッドをスクラップにした犬が一斉に部屋へ入り、睨みつける。

「突然なんだ、襲っても来ない..」

犬の身体がゆっくりと、青白く光る。

「…まさかあの男、やられた。」

只では退散しないと言う事だ、犬を爆弾に変えてでも報復はする。機能とは別の人としての意思が稼働した。


「くそ...何者だお前はぁぁっ!」

爆音が鼓膜を破壊し、答えを隠した。

それが聞こえたからといって、納得する回答だとも限らないであろう。


「これからだ世界

お前が本格的に形を変えるのはな。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る