第13話 キカイノクニ
「世界は変わるんだよ、これから」
あの日から、余り笑わなくなった。
笑顔が無意味だと知ったからだ。
世界は少しだけ豊かになり、砂漠の砂で覆われていた景色は金属に近い堅苦しい風景になった。
「どうしたんだよポピラ?
また昔の事を思い出してんのか。」
「‥最後に話した女が言ってた。
ギアは思想を叶える鍵だと、でもどうだ。幾ら集めても只の歯車だろ?」
「仕方ないだろ、前と比べりゃ今の世は別物。スクラップで転がってた機械の人間たちは道路やバイクを造る材料になってる。ギアは今やそれを動かす一つのツール、夢を持ってただ手元に取っておいてるのはお前くらいだ」
欲は技術に、夢は資源に
それが今の世界の常識になっている。
「優秀なエンジニアが増えて良かったじゃねぇか、これもモノの無い時代にアイデアを湧かした結果だろ?」
「世界は不完全だがな、表面上だけだ砂の上に街を乗せただけ。結局は形だけのハリボテだ。」
人は自ら歩く事をやめた
臭いものに蓋をして見えなくする事で〝考える〟という作業を確実にしないと決めたのだ。
「便利ってのは表面的なものだ、それに一々文句付けてるとキリ無ぇぜ?
お前も受け入れて、楽に生きろよ。」
男はバイクにまたがり道路を走る。
昔は共に思想を掲げ夢を追っていた、しかしそれも過去の話。
「アイクル..お前の夢を笑った事は一度も無いぞ。オレの夢は笑い物か?」
男は機械化を受け入れた。
しかし世界の部品になる事を拒んだ。
過去の記憶はいまだに、残ったままだ
「もう一度壊すか...ギアの力で」
必要悪だといえば都合が良いが、それは決して世界を救わない。
だからこそ好都合だ、壊す理由が簡単に出来た。悪意も脅威も無くていい。
「そういえば前に言われたな、今思えば確かにその通りだったよ。」
「オレは世界の支配者だ」
過去の記憶は、
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