第9話 機生物襲来..!
夢だった、と言い聞かせた。
街の向こうはもしかすればずっと建物が立つ世界に繋がるかもしれないと思いを馳せたが、案の定砂漠の砂埃。
「おい、ポピラ!
少し足早くなってるぞ、どうした?」
「いや、別に。
なんとなくそうしているだけだよ」
少しだけ
世界を創る事に変わりは無いが、密かに人間が動いていてくれるかもしれないと、あらぬ期待を持ってしまったからに他ならない。
「ギアはどれだけ集まったんだ?
目安としてどれくらい必要なんだろうな、何か知らないのか。」
「方法も何もわからない。でも多分何か遣り方がある、今はがむしゃらにギアを集めるしかないみたいだよ。」
「そうか、なら早速どっかの奴に...」
言葉が途中で途切れた、不具合か?
それにしては静寂が過ぎる。
「ボルサスどうした?」
少し先を歩いていたポピラは一度も後ろを振り向かなかった。ボルサスがどんな調子からはまるでわからなかった
「ボルサス...おいっ!」
気が付かなかった。ボルサスが胸に穴を開けられ、宙ぶらりんに空を彷徨っていたなんて。
「ヒヒッ!
歯車もーらい、どんな力かな?」
踊っているようにフワフワと何かに刺されて浮いている。
「..見たことある、この形に大きさは以前厄介な目にあった。」
「ナンだよ、遭った事アンのか?」
「ワタシたち以外はゴミ同然だ、きっと他所に流したヤツだろう」
「……捕ラエる。」
長い尾を持つ者、鋭利な鎌を構える者
長い脚と自在の糸を操る者
三竦みで動く巨猛の生物兵器。
「オレたち機械蟲は人間たちのライフギアを回収してる、ギア狩りだ」
尾をムチのようにしならせボルサスを吹き飛ばす。尾の先端にはギアが絡め取られ、砂に倒れるボルサスの胸には棘で開けられた穴が開いている。
「ボルサス!」
「..済まねぇな、俺がショートしちまった。ギアを持っていかれた...。」
「喋るな、屑が。」
ポピラの背後から長い鎌が延び、穴を捉える。穴は無理矢理押し広げられ、原型を保てなくなった身体は無残に斬り刻まれた。
「ボルサス!」「他愛も無い。」
清々しい顔をして一命を滅ぼした、それは正に人に有らず。虫けらのような愚挙を平然とやってのけた。
「おいスティング、こいつ〝補助型〟だぜ、「ショート」、触れたものを停止させる。使えね〜!」
「どんな力でもいい、回収しておけ」
思いや展望があるようには見えない。
単純な人の邪魔か、あるとすれば邪な事柄の要因が伺える。
「目的は何、何の為にギアが必要?」
「あ〜それはなぁ..」
「口を慎めスコルピオ、人など滅びゆく存在。既に息はしていない」
「なら話してもいいじゃねぇかよ。
屍なら返事もしねぇだろうしよぉ!」
「..捕ラエる。」
濁されたが悪辣な集団だと言うことはニュアンスで伝わった。だとすれば答えを出すのはこちらの方だ。
「‥悪いけど、壊れて貰うよ」
「あぁ?」
右腕を剣に変化、棘付きの尾を持つ機械蟲に思い切り振り上げる。
「細っせぇ腕だな!
そんなんでぶっ壊そうってか!?」
確かな硬度がわからないが尾を斬れる剣と答えを出した。威力不足か漠然とした導きでは限界があるのか同等の打ち合いとなる。アンサーは創造の具現化では無く答えを形にしたもの、明確で無ければベストは出ない。
「ダメか、なら斧だ」
右腕の形状を変化、剣から斧形態へ。
「かち割れっ!」
「お前戦い慣れてねぇな?
よく考えてから武器くらい振れ!」
悠々と尾の腹が斧を弾き返す。
直接の物理的硬度では勝ち目がまるで無さそうだ。他の答えを導き出さねば
「熱で溶かす」「まだやんのかよ!」
筒状の大砲に手首を変化させ、溶岩に近い灼度の煮えたぎる砲丸を飛ばす。
蟲はそれを尾で落としたが、接触した箇所は焼け上がり湯気をあげた。
「熱っちぃ〜!
...腐り落とすしかねぇなこりゃ。」
鋭利な先端で根元を傷付けると、トカゲの如く尾が削ぎ落ち砂に倒れる。
「自分で切断した⁉︎」
「おうよ、んでもって..はんっ!」
勢いを付け力むと落とされた断面から再び尾が生え揃う。機械の複製による再生か、生き物の性質を宿して新たなる境地に達したのか、機械蟲の機能は未知数で計り知れない箇所が多い。
「上手くいったと思ったか?
甘いんだよ人間風情が。いや、元人間って言うほうが正しいんだっけか」
「..言葉が強いけど、それは逆に人間に何か思うことがあるって事だよね」
「うるせぇ、生意気言うな!」
図星か何がしか因縁を持つようだ。
それが人が優位立ったものとは限らないだろうが下手をすれば、本当にたかがの風情で起きた事柄かもしれない。
「俺たちはメモリギアを奪う。
人の沸いた頭を冷やしてやんだよ!」
「終わった生命人類を閉ざす者。
機械蟲〝スティング〟名を忘れるな」
「毒して骨組みまでぶっ壊す!
〝スコルピオ〟名を呼ぶ前に死ね!」
「..捕ラエる。
〝タランチュラ〟...ソレダけ。」
律儀に名を名乗るのはせめてもの弔いか、死すらに見放された人類に同情を煽るような素振りを伝える。
「ボルサスじゃないけど、今回ばかりはショートして貰いたいんだ。」
一つ傲りを理解した
己の力で護れるのは己のみだと。他人を救うには、熟練が多少いるらしい。
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