第8話 人の街コンティニュード
メモリギア能力〝アンサー〟
導き出した答えを具現化し、投影する
但し限定条件として左腕に収まった形に留まるように。
「非力な奴の覚醒かぁ?
ポッと出が調子こいてはしゃぐなよ」
「冷静でいたから芽生えた力だよ。
偶々君と同じ、モノを創る力だけど」
「俺と同じ?
一緒にすんなよ、俺は王だぞっ!!」
街をつくり家をつくり住人を住まわせた、囚われの身が同等な筈が無い。
低い沸点が更に低く熱くなる。
「普通恥ずかしげもなく言うか?
俺は王だぞ〜って、嘘だろ。」
露呈した本性は止まらない、支配した者は敵を作りやすく、それを払う感覚は酷く鈍くなる。
「ボルサス、てめぇ如きがモノいうな
地中深くに眠ってろ!」
足場に盛り上がる砂が全身を包み、硬く固まりボルサスを閉じ込める。入れ物のつくりは拷問器具、アイアンメイデンに酷似している。
「うるせぇ奴か寝静まったな。
次はてめぇの番だぞクソ旅客!」
声を荒げ大袈裟に喚き散らす様は滑稽の極み、少なくとも王には見えない。
「……」「おい、何してる⁉︎」
ボルサスの入った入れ物をさすりながら静かに見つめ佇んでいる。戦う意思は無いとばかりに背を向けながら。
「硬度はどのくらい?」
「..あ、なんだよかち割ろうってかよそうだな、ダイヤモンドくらいか?」
「ダイヤモンド..」
「へへっ、バカかよ信じやがった。」
からかいデタラメに伝えた。
勿論並大抵の硬さではなく、素手や武器では到底壊せない強固なものだが。
「わかった、有難う。」
斧と化した右腕がいとも簡単に叩き割る、ダイヤモンドを超越したのだ。
「…ウソだろ..?」
「余り傷付けたくは無い。
出来れば、降参してくれるかな?」
人に向かって武器を向けるのは好ましい事では無い。いつか完成する世界の住人となる人々なのだから、健全なままでいてくれなければ困る。
「ふざけんなぁっ!」
「やっぱりダメか、仕方ない..」
「うらぁっ!」
人を直接痛めつける力はカルギスには無い。地形を少し変化させ、間接的な〝迷惑〟を掛けて傷を付ける。
「落石?
土を岩に変えて頭に落としたみたいだけど無駄だよ。僕の腕は今ダイヤを粉々に砕けるんだから。」
己の嘘に足を掬われた、遅かれ早かれバチは当たるものだ。確実に。
「動かないで、もう無駄だからさ」
「何するつもりだ、やめろっ!」
後退りして尻餅を突いてまで命乞いをする〝みっともない〟とはこういった姿の事を言うのだろう。
「答えは何も残酷なものばかりじゃないよ、優しさだけでも決して無いけど先ずは受け入れて欲しい。」
右腕の先が飛んでくる、身体に巻き付いて縛り上げ拘束する。答えを模索した結果、掌をロープに変化させた。
「これなら身体を傷付けなくて済む
...だけどギアは頂くよ?」
人を支配する力は要らない、それを導き出した一つの答えだ。
「なんでだよ!?
結局身体痛めつけんのか、偽善者!」
「うるせぇ!
それをやんのは俺だ、数分前の言葉が現実になったな。ざまぁみやがれ!」
ショートを発動させ、容赦なく胸に手を突っ込みギアを探る。
「ざ..けんなぁ...俺の街、だぞ...!」
「僕が新しく世界を創る。
此処よりも大きく、平和な街も必ず出来る。王なんかいない、皆平等だよ」
「カ…ス..が...。」
「よっ、あぁ..なんか言ったか?
用が済んだらしっかり眠れ。ギアは貰ってくぜ、おやすみオウサマよ!」
ギアを引き抜かれたところで、完全にショートし停止する。最後まで卑怯に顔を歪ませた悪辣な男だった。
「ほら、ご褒美だ。」
「..どうも有難う、次に進むよ。」
前よりも強固にギアを集める目的が出来た、留まっている暇は無い。初めの蟻地獄の穴にロープを伸ばし、地上へと出る。次なる旅路へ向かう為。
「待ってくれ!」「……?」
「俺も連れていってくれ、此処にいても何も無い。一緒に行かせてくれ!」
これもまた命乞いか。
優位ある者についていく、いい判断だ
「いいよ。
人と歩くのは久し振りだ、今度は長く一緒にいられるといいな。」
「‥任せろ!
俺はそう簡単にはやられねぇよ!」
「頼もしいね、宜しくボルサス。」
足元を掬わない力を得た、ポピラは漸く自分にそう思う事が出来た。
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