神様と見ないふり

砂上楼閣

第1話〜神様は白くて小さくてふわふわで

我が家には神様がいる。


白くてふんわりした、小さな神様が。


『めぅ〜?』


今日も興味津々に手もとを覗き込んでくる。


首をかしげて、少し手を伸ばして、大きなあくび。


あっちでゴロゴロ、こっちでスヤスヤ。


我が家の神様は自由気ままだ。


『めうめう』


神様には話しかけたらいけない。


そこに居ることに気付いてるって、気付かれてもいけない。


もしバレたらどこかに居なくなってしまう。


家から出ていってしまう。それはイヤだ。


『めう?』


だからそんなにじゃれつかないで。


足にまとまりつかないで。


手もとをつんつんしてこないで。


思わず抱きしめちゃいそうになるから。


『めぅ〜。めぅ〜』


小さくてふわふわで気まぐれな神様。


おひざや背中を上ってくる。


重くないけど、不思議な感じ。


くすぐったい、でもがまんがまん。


『めう!めう?』


ノートにのらないで。


書けなくなっちゃう。


本にはさまらないで。


読めなくなっちゃう。


『めぅ…。めぅ…。』


神様は気持ちよさそうに寝てる。


でもごめんなさい。


お腹が邪魔で前が見えないよ…。


お昼寝は頭以外でしてほしい…。


『めう?めうぅ』


こっそりお供えもの。


にぼしはきらい?


ああ!


ミルクでばちゃばちゃしないで!


『めーぅー』


雷がゴロゴロ言ってる。


同じ神様でも、雷様は苦手。


すぐ近くでゴロゴロ言ってる。


こっちの神様は、大好きだ。


『めう、めぅめぅ』


横になると近くに来てごろり。


布団をめくって入ってくることも。


うとうとしてたら布団から飛び出していった。


……何ごと?


『めぅ〜』


朝起きたら白いもふもふ。


家を出る時ももふもふ。


帰ってきたら別の場所でもふもふ。


そんなに寝てて飽きないのかな。


『めーぅ』


神様は日向ぼっこが好き。


神様はせまい所が好き。


神様は高い所が好き。


神様は……


『めぅ…?』


神様、ごめんなさい。


『めぅ』


今日でお別れです。


お父さんもお母さんも、神様は見えません。


神様が怖いんだって。


だからお別れです。


『めぅ……』


お婆ちゃんが生きてれば良かったのに。


お父さんもお母さんも、いくら言っても聞いてくれません。


だから…


『めぅぅ』


……ありがとう、神様。


しょっぱくない?


……さようなら、神様。


大きくなったらまた会いにきます。


『めう』


次会った時は、もう無視しません。


たくさん、たくさん遊ぼうね。


またね、神様。

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