第2話

あの日、彼に会ってから5日が経った日、僕はテレビでニュースを見て驚いた。


地球の周りにある惑星の1つで人間が殺されたそうだ。

その星に居た企業の従業員が全員殺されたと報道されていた。人工生命体の管理で、その星にいた3人が殺害された。その3人以外その星には人工生命体しか居なかったそうだ。

緑色の空と沢山の牛と豚が写った。

その星の人工生命体達を拘束し、取り調べが進んでいる。

現在分かっていることは、この星で働く1人の人工生命体が行方不明になっていると言うこと。5日前に会った彼にそっくりなの顔写真が写った。

目撃情報などはこちらへ連絡してくださいと流れた。

緑色はその会社のロゴの色らしい。




約50年前に人工生命体による大量殺人があった。亡くなったのはある組織の重役達だった。1人の人工生命体が彼ら全員を滅多刺しにした痛ましい事件だ。

結局それは恨みを持った人間が指示を出した事だった。人工生命体が従ってしまった為に起きた事故とされた。

その時から人間は分かっていたはずだった。

彼ら人工生命体の危険性を。

彼らに本当に感情が無いのか。

ただ僕らの都合の良い様、感情など無いと決めつけていただけではないのか。


僕がまだ幼かった頃、はっきりとは覚えていないが人工生命体と共に暮らしていたのだ。

病気がちだった母のサポートに来ていたのか何だったのか曖昧なのだが、人工生命体を身近に感じていた。

朝起きればご飯を作ってくれていたり、お風呂から上がれば髪を乾かしてくれたり、とそんな事があった気がする。

僕は他の人間と同じようにその人と接したし、他の人間となんの大差もないと感じていた。


僕は彼らのもっと事を知りたいと思った。

5日前に会った彼に何があったのかも。


だからといってどうしたら良いか分からない。彼の行方は分からないし、5日前の殺人だって刑事でも探偵でもない僕が調べたって大したことは分からないだろう。

なら僕には一体何が出来るのだろうか。。。





親切な人間と夕日が沈むのを見て、一緒にご飯を食べたあと、ボクは次の事など何も考えていなかった。

しかし、親切にしてくれた彼に何か勘づかれるのも嫌だったので早々に別れを告げた。

正直もう満足したのだ。地球に来れただけで。ボクらを作った彼らが悠々と生きている姿が見れただけで。

ボクらは生まれながらに敗者にしかなり得いとしっかりと悟った。

このまま生きていても仕方がないとも悟った。

さて、これから何処に行こうか。







人工生命体の彼と出会った日から約1年が経った。

今僕は人工生命体についての研究をしていた。彼らには感情があり人間と共に生きて行けると信じて研究を続けている。


1年前のあの事件で、行方不明となり犯人と疑われた人工生命体は、首吊り死体となってアパートの空き部屋で発見されたと数週間後のニュースで報道された。

従業員が殺害されたあの企業は人工生命体の扱いが特に酷く、栄養失調は当たり前で怪我をしてもそのまま働かせていたそうだ。俗に言うブラック企業だ。

世間にそれが広がり、イメージダウンにより経営が悪化、そして倒産した。

その後、新たに人工生命体の労働基準を改める法律ができた。






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最後の“ イシ” まぎ @magi836

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