予期せぬ訪問者… ～ピザ～ ※【短篇集(ピ)】より改題※

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　ピザのお届けに参りました…

　あなたは、この様な言葉を耳にしたことはないだろうか？

　この言葉は、決してピザの配達員がピザを届けに来たわけではない。

　ピザなど誰も頼んでいないのだ。

　あなたは、頼んでもいないピザ屋の配達員が突然訪ねてくるという話を耳にしたことがないだろうか？

　この訪問者は、決して詐欺師や強盗などではない。

　頼んでもいないピザ屋の配達員が来たところで警戒しない住人などそうそういない。

　そう考えると犯罪者が成り済ますにはピザ屋は怪しすぎる。

　ピザのお届けに参りました…

　では一体、この言葉は何なのだろうか？

　そして、この言葉を放つ訪問者とは一体何なのだろうか？

　この予期せぬ訪問者について、ちょっとした噂があるので聞いてほしい。

【予期せぬ訪問者の噂①】

　予期せぬ訪問者について。

　訪問者はピザ屋の配達員らしい。

　ピザの配達を頼んでいなくても突然訪ねてくるらしく、訪問者はインターフォンまたはノックをした後で住人に声をかけてくると云われている。

　なお、真偽は不明だが、体験者によると訪問者は決まって同じことしか云わないらしい。

　それは以下の通りである。

　ピザのお届けに参りました…

【予期せぬ訪問者の噂②】

　訪問者の発する言葉について。

　訪問者、つまりは頼んでもいないピザ屋の配達員が来たとき、相手が自分に向けて発した言葉に決して声を出して反応してはならないらしい。

　反応した場合、訪問者は反応した者とその周囲にいるものに対して害をなす場合があるらしいので、相手が言葉を発した場合、無視する他に道はない。

　また、その害というものは、かつてその者が犯した罪の重さにより変化するという説もあり、重罪を犯した者は、例え服役後であっても最悪の場合は発狂して死に至るとも云われている。

【予期せぬ訪問者の噂③】

　訪問者からのメッセージについて。

　体験者によると訪問者は、訪問後には必ずと言って良いほど特定のモノへ向けたメッセージを残していくらしい。

　そのメッセージとは以下の通りである。

　３０２号さん、ご利用ありがとうございました。

　後ろの言葉は一例だが、特定のモノへ向けたメッセージというのは、上記の３０２号さんという部分である。

　３０２号というのが、部屋番号なのかどうかは不明だが、一説によると３０２号室以外にもこの訪問者が現れることがあるらしい。

【予期せぬ訪問者の噂④】

　訪問者の目的について。

　これは様々な噂がある。

　生き別れた家族を探している、復讐の相手を探している、夜逃げした債務者を探している、単なる変質者、など多岐に渡る。

　しかし、それらの説の中で、一つだけ上記に記載した予期せぬ訪問者の噂②とリンクするものがある。

　それは、法で裁けぬ悪者を懲らしめるためというものである。

　なんとも荒唐無稽な噂ではあるが、仮にそうだと考えれば、予期せぬ訪問者の噂②にて触れたかつての罪の重さにより～という件（くだり）とリンクしていて、ある意味では納得がいくものでもある。

　しかし、体験者の中には、喧嘩はしたが他の犯罪行為は全くしていない、弱い者いじめだけは絶対にしないなどといった元ヤンキーの女性や、何も悪いことをした覚えがない田舎育ちの女性もいて、それらの体験者も往々にして恐怖体験をしているため、必ずしも訪問者が悪を懲らしめるために訪ねてきているとは考えずらい部分がある。

　しかし、一部の体験者には、この訪問者のお陰で助かったという者も何人かいるため、未だに訪問者の目的や善悪について語ることは出来ない段階である。

【予期せぬ訪問者の噂⑤】

　訪問者の正体について。

　これも様々な噂がある。

　事故死したピザの配達人の幽霊、ピザが大好きな亀人間、ピザが苦手な妖怪、ロリコンの変質者、など色々と云われているが、何（いず）れにしても訪問者は人間ではないというのは共通しているらしい。

　極一部に宇宙人や未来人であるという噂も流れている。

　訪問者の正体については、ピザ業界の一部のみに伝わる噂もある。

　それは、かつての大事件の被害者または加害者といった関係者が、ピザの配達員に姿を変えて現れているという噂である。

　その事件とは、人類の汚点とまで言われているピザランド事件である。

　このピザ業界のみに伝わる噂に関連する噂として、全く事実無根で最初にこれを云った発信者も定かではないが、一つの噂があるので、それも載せておく。

　かつて、訪問者はピザランド事件の顧客、つまりは加害者となる立場であったが、ピザランドの運営側と自身と同じ立場の顧客達に対して反旗を翻（ひるがえ）し、ピザランドに関わる者の情報を漏洩させることでピザランドを崩壊させ、司法取引により自身の罪は帳消しとなった者である、という噂がある。

　そして、この説が次に記載する予期せぬ訪問者の噂⑥を生んだとされている。

【予期せぬ訪問者の噂その⑥】

　３０２号について。

　予期せぬ訪問者の噂③で記載した訪問者からのメッセージにある３０２号とは、部屋番号のことではなく特定の人物を指しているという噂がある。

　３０２号とは犯罪者や何らかの組織に属する者に与えられた番号であり、その番号はピザランドと関わっているらしいというものや、ピザランド事件の主犯格として死刑が執行された天の一族の男の系譜が３０２番目の直系男子であることを示す番号が３０２号らしいというものがあるが、どちらも定かではない。

　また、ピザランドの創設者は上記の天の一族の男とされているが、実は本当の創設者は別の人物であり、３０２号というのは、その人物の名を現しているという噂もある。

　３０２号をみおじごうと読み替えたり、あるいは、みおじごうのみおじの部分を苗字のことであると考えて、苗字がごう、という人物ではないかという噂もあるが、あまりにも無理があり過ぎるため、この噂は都市伝説オタクのこじつけであるとされている。

　以上が予期せぬ訪問者の噂を纏めたものである。