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畑仕事でついた土を清らなか井戸の水で落としてから、二人は鳥の巣の中に戻った。
白藤の宮は若竹姫のために、お茶を入れてくれる。
若竹姫はその間、さっき自分たちでとった新鮮な瓜の一つを包丁で切って、葉っぱの形をしたお皿の上に盛り付けた。
二人は鳥の巣の縁側に戻ると、そこに腰をかけて、お茶を飲み、それから取り立ての瓜を食べた。
「美味しい」
若竹姫は言った。
いつもはお喋りの白藤の宮は、瓜を食べている間、そんな若竹姫の顔を見ながら、にっこりとただ微笑んでいるだけだった。
「あなたの結婚のお話、聞きました」
瓜の乗ったお皿が空っぽになったところで、白藤の宮がそう言った。
若竹姫は無言。
若竹姫はずっと、ただ曇っている空だけを見ていた。
「あなたはとても美しい人です。そんなあなたが今まで結婚のお話を断っていたことが、むしろ不思議なくらいですよ。
個人的には都一と言われる撫子の宮よりも、若竹姫、あなたのほうが美しいと私は思っていますよ」とふふっと笑いながら白藤の宮は言う。
「……そんなこと、ありません」
と若竹姫は言った。
それは若竹姫の本心だった。
若竹姫は一度だけ、撫子の宮と宮中の中であったことがあった。
そのときに見かけた撫子の宮は、本当に(まるで本物の天女でもあるかのように、この世の人とは思えないほどに)美しい人だった。
美しくて、暖かくて、華やかで、とてもいい香りのする、人だった。
ゆっくりと動いて、そこだけ時間がまるで遅くなったようにすら感じるほど、撫子の宮は綺麗だった。
若竹姫はそんな撫子の宮に見惚れてしばらくの間(その場にいたほとんどの人がそうであったように)動けなくなった。
そんな若竹姫を見て、撫子の宮はにっこりと、花が咲くように笑った。
鳥の巣(旧) 雨世界 @amesekai
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