第8話 【冒険者ギルド登録と空撃の魔女 5 】
「
ギルドについての説明を始める前に俺にそう自己紹介をしてきた。
「では早速、始めさせて頂きますが……大前提としてギルドは基本的に、冒険者同士の揉め事には関与しないという事を踏まえてお話させて頂きます」
どうやら冒険者同士のいざこざは一日に何回も起こる起こるらしい。
いちいちそれを仲介していたらキリが無いとか。
一般人に何らかの被害が出た場合の罰則は存在するが、それ以外では余程大事でない限りは冒険者ギルドは介入しないと説明してくれた。
「ではまず、冒険者ギルドシステムであるランク制度についてお話させてもらいますね」
まずはギルドのランク制度についての説明をしてもらう。
「冒険者ギルドは冒険者の実力を示すため、現在ランク制度を取り入れております。ランクはS〜Gまで存在していて、ランクを上げるためには相応の実績が必要であり、ギルドがそれを相応しいかどうか判断します」
カレラさんは続けざまに喋る。
「依頼には危険度や難易度を示すランクが同じようにS〜Gまで存在しています。そして基本的に冒険者は、自身と同じランクまでのものを依頼として受けることができます」
なるほど。
どうやら依頼を受けるためには、自分自身がそのランク以上である必要性があるらしい。
それは冒険者の安全を考慮してのことだという。
「しかし、数名の冒険者同士でパーティを組む場合に限り、パーティランクより一つ上の依頼を受ける事ができます」
「それは二人とかでも大丈夫なんですか?」
「はい。人数が多いに越したことはありませんが、報酬のことを考えて冒険者二人でパーティを組む方も結構いらっしゃいますよ」
俺は疑問に思ったのでそう聞いてみたが、どうやら大丈夫らしい。
俺が将来、パーティーを組む機会があるのなら、出来れば二人組が良い、と考えた。
「そして、次に討伐した魔物の買取についてです。ギルドは冒険者が討伐した魔物の買取を行っています……が、他の買取店と比べて少し審査が厳しいので気をつけてください」
それを聞いて、ならギルドに魔物の素材を売る冒険者はいないのでは、と俺は疑問に感じる。
「いえ、買取価格が一定というのもありますし……なにより、ギルドに魔物を売却するとランクアップに必要な実績に加味されるんです」
そう言ってくるカレラさん。
なるほど。ランクが上がればそれに比例して儲けやすくなるのである。
さすがに、よく考えられている。
そういえば……あの大森林で戦った赤い狼の牙と魔石と牙が懐にあることを俺は思い出した。
どのくらいのお金になるのだろう、と考える。
(というか、なんでこの人は俺の考えてることが……ああ、そういえば昔、婆さんにポーカーフェイスがどうとか指摘されたっけ……)
そう思い俺は本気で、ポーカーフェイスを鍛えようと思った。
カレラさんはそんな俺を見て、クスッと笑いながら説明を続けた。
「先程ランクアップには実績が必要と話しましたが、AとSランクの際にはそれだけではなく、ランクアップ試験を受けてもらうこととなります」
「試験というのは具体的に何をするんですか?」
「色々とありますが……まぁ、大体はランク相応の魔物の討伐ですね」
高ランク冒険者はやはり実力が重視されるわけか。
必要なのが実績だけだと、実力のない高ランク冒険者が増えてしまう可能性がある。
俺はへー、と納得する。
「ただ、それもあって高ランク冒険者はとても少ないんです……ランクS冒険者は世界に五人しかいなくて、その強さから、
『
冒険者の中で現在、最も強い五人を示す名称らしい。
この帝国にはその中では最も多い二人が所属しているとか。
恐らく、今の俺では逆立ちしても勝つことは無理だろうが一度手合わせしてもらいたいと思った。
「とても大きな実力と実績が必要ですが……ランクS目指して頑張ってくださいね」
ウフフ、と微笑みながら俺にそう言ってくる。
(あ、この人本気で言ってないな……まぁ、無謀だとはわかっているけどさ、その……何か見守るような優しい視線をするのだけはやめてほしな)
俺が心の中でランクSに憧れていると、カレラさんは何故か、何か微笑ましいものを見たように視線を向けてきたのだ。
遠回しにお前には無理だ、と言わんばかりの。
それを見て俺はも思わず、顔を顰めながらそう思ってしまった。
そうしてその後もカレラさんから、ギルドについての説明を更に詳しく聞いていく。
さすが受付嬢とあって、説明力がとても高く分かりやすい説明だった。
「……では、最後は期限内に依頼を達成できなかった場合の違約金についてとなります」
違約金……分かりやすくいえば罰金である。
「依頼を期限内に達成できなかった場合はその報酬の二割をギルドに支払って頂くこととなりますのでご注意下さい
俺はその違約金について考える。
カレラさんは二割といったが、あまり知識のない俺にはそれが高いのか安いのか分からなかったのだ。
ということで質問する。
「なぜ二割なんでしょうか?」
「依頼主への対応など諸々含めるとそれが適正割合となるんですよ」
カレラさんは諭すようにそう返してくれた。
俺はそれを聞き、まぁいいか、と納得した。
「ではこれで当ギルドの説明についてを終了します……何か分からないことがあったらいつでも聞いてくださいね」
ふー、と息を吐きながら俺は楽にする。
かなり長い説明だったし、今日会ったばかりの受付嬢からと話し込んでいたということもあってかなり精神的疲労が溜まっていたのだ。
だが、これで説明は終わりらしい。
俺はさっさとギルドカードを受け取り、宿をとって今日はもう休もうと考えていたのだが、
「では次に、実技の審査に移らせて頂きますね」
……今なんて言った?
「じ、実技の審査ですか?それは、今から俺の戦闘力を審査するっていうことですか!?」
「ええ、はい……あの、もしかして知らなかったのですか?ベテラン冒険者が新人冒険者の現時点での実力を判断し、それに応じてのランクからスタートできる制度なのですけど……」
そんなのがあるなんて……。
精神的疲労が溜まっているこの状態で戦うのか……。
せっかく休めると思ったのだが、まさかのカレラさんの言葉に俺はため息を吐いてしまう。
「……はぁ、分かりました。……それは今から俺が実際に戦うという事でいいんですよね?」
「はい、そうなりますね」
俺のその質問にカレラさんは丁寧に答えてくれた。
少し面倒だが、今の自分の実力がどこまで通用するかも気になったのでまぁ、いいかと考える。
「では、これから手続きに移りますね……現在、都合が良くてカノン・シュトラバインさんのお相手をしてくれる冒険者は……」
「私がやる」
カレラさんが俺に向かってそう言ってきたとき、明らかに違う声色でそう言うのが後ろの方から聞こえた。
俺は反射的に後ろを振り向く。
そうすると、一人の少女がこちらに歩いてくるのが見えた。
とこ、とこ、とゆっくり歩いてくるが、俺はその一歩一歩の体さばきからとんでもない実力者だという事を感じ取る。
(これは……かなり強いな。遠目から見ても分かるほどに完成された動き……何者だろう?)
俺はそう思わずにはいられない。
ここまで強い人は、婆さんを除くと見たことがなかったからだ。
そう思っていると、後ろからカレラさんの声が聞こえた。
「レイラさん!?」
かなりの大きな声だったので俺は少し驚いてしまった。
おそらくはあの少女の名前だろう。
「ん……」
そんなことは気にしないとばかりにその少女はこちらへと歩き続ける。
しかしギルド内にいる冒険者達は違う。
カレラさんがそう言ったのを聞くと、様々に騒ぎ始めたのだ。
「レレレレ、レイラーー!?あんな少女が!?」
「ま、まさかレイラってあのレイラ!?」
「このギルドにも数えるほどしか居ないAランク冒険者がなんであんなやつの相手を!?」
ザワザワとかなりうるさかった……が、俺はそんなことは気にする余裕が無くなっていた。
誰かが言った『Aランク』という単語に驚いていたのである。
(かなり強いことは分かるけど、あんな少女がAランクなのか……)
そう考えているとやがてその少女は俺の前に立つ。
そうして俺は目の前にいる少女を見る。
黄金と錯覚するほどに美しい黄金の髪の毛をポニーテールにしてまとめており、その長いまつ毛。真っ赤な両目はとてもクリクリしているが、どこか強い信念の光を感じされる。
身長は俺より低く、おそらくは160センチほどであり出るところは出て引っ込むところは引っ込んでいる、なかなか女性らしいスタイルをしていた。
おそらくは同年代である。
俺はついその美少女に思わず見とれてしまう。
ここまで美しい女性を見たのは初めてであった。
しかし、俺は直ぐ我に返る。
「カ、カノン・シュトラバインです。それで、俺の相手はあなたがしてくれるのですか?」
「うん……ん、私はレイラ。……一応、Aランク冒険者だよ。だから実力は心配しなくていい」
ご丁寧に自己紹介までしてもらったが、ここでカレラさんが口を挟む。
「レイラさん、どういうことですか?……別にカノンさんが了承するのであれば問題は無いのですが、今までは自ら相手をすることなんて無かったのに……」
「ん、今までのは皆弱かったから……でもカノンは違う。てか私よりも強いかも」
レイラさんがそう言うと、カレラさんや話を聞いていた冒険者ほとんどが目を見開き驚いた。
ランクA冒険者よりも強いかもなんて聞いたら、そりゃそうなるだろう。
余計なプレッシャーをかけないで欲しい。
「カノン、大丈夫だよね?」
「え、ええ……それでいいですけど」
いきなりそう聞かれたので、少し戸惑いながらそう返す。
まぁ俺もランクA冒険者と戦ってみたいので、もちろん断らない。
「これでいいよね」
「まぁ、はい……では、少々お待ちください。審査はギルド付属の練習場で行いますので手続きをしてきます」
そう言って、カレラさんはカウンターの後ろへと行ってしまった。
「……じゃあ、先行こっか」
「は、はい」
俺はレイラさんが歩く後ろについて行く。
そうすると見えたが、俺たちの話を聞いていた冒険者達は、何が起きているのかが分からないとばかりに絶句していた。
レイラさんは先程と同じようにトコ、トコゆっくり歩く。
俺はレイラさんの横に立ち、横顔を観察してみたがぼー、としていてよく分からない。
(はぁ、早く終わらせて休みたい)
レイラさんと先程のヤジの冒険者、この二つを組み合わせると、何か面倒なことが起こりそうな気がして俺は思わずそう思ってしまう。
そうして俺は、レイラさんの案内のもとギルドの練習場へと赴くのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます