第21話 体育祭当日④

 体育祭は結果的に赤組が優勝し、俺たち白組は最下位のまま終わってしまった。

 橙色に染まった夕日が砂などで汚れきった俺たち生徒を照らしている。

 今年最後の出場となった三年生の中には負けて悔しかったのか、涙を流している人もいたり、逆に優勝できて嬉し泣きしている人もいたりと、グラウンド内では喜怒哀楽の感情がまだ渦巻いていた。

 そういや、言い忘れていたのだが、大縄跳びの結果としては白組が百五十回飛んで一位になった。それが影響して、午前の部が終わる頃には二位まで浮上していたんだけど……午後の部で負けまくった結果がこれである。

 俺は疲れと悔しさが入り混じったため息を吐きつつ、テントなどの片付けに勤しんでいた。

 この片付けが終われば、グラウンドもいつも通りとなり、今年の体育祭は完全に終わってしまう。

 来年こそは優勝したいところではあるけど……結局は運に近いんだよなぁ。例え、優勝したいからと言って、筋トレなどをしたところで他の奴らがダメだったら、優勝などできっこない。体育祭というものは、個人種目ではなく団体種目だ。他の奴らにも勝ちたいという気持ちがない限り、半端なものであったなら絶対に勝てるはずがない。

 そんなことを思いながら片付けをテキパキと済ませ、閉会式から一時間後くらいにはグラウンドも日常を取り戻していた。

「お兄ちゃんお疲れ様でした」

 奈々が俺の水筒を片手に駆け寄ってきた。

「ああ、奈々もお疲れ」

 俺は奈々から水筒を受け取ると、一口仰ぐ。

 疲れた体に染み渡る水分……くぅ〜! 美味すぎる!

「あれ? そういえば、明日香と雪はどこに行ったんだ?」

 閉会式が終わったあと、二人とも片付けの方に向かったところまでは確認できている。

 けど、今グラウンドを見渡しても二人の姿がどこにも見当たらない。

「ああ、あの二人は私が始末しておきました」

「……え?」

「冗談です。お兄ちゃん」

 奈々が「ふふふ……」と微笑んで見せる。

「ちょ、こ、怖いよ? 奈々? ヤンデレルートだけはやめてね?」

「ヤンデレ……? が、どういうものなのか存じませんがとりあえず分かりました。二人なら先に教室の方に戻っていると思いますよ? なんか片付けの際に水を頭から被ったとかで……よくわからないですけど」

「そ、それ、奈々がやったわけじゃないんだよな?」

 そう問うと、奈々に思いっきり腹を摘まれた。

「私をなんだと思っているんですかっ!」

「い、痛い……ごめん! 謝るから!」

 当初入学した時はいきなりお兄ちゃんだなんて呼ばれるから何が起こっているのかといろいろと不安なことがいっぱい起きたけど……約半年の間に楽しかったことがあったのも事実だ。

 奈々、明日香、雪……三人の美少女に囲まれ、友人である豊もいる。

 俺の高校生活は波瀾万丈なことも起こりそうだけど、それでも最高の友人がいて幸せだと感じる。

 これからの二学期。どんなことが待ち受けているのだろうか……。ちょっと考えただけでも……。

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お兄ちゃんのことを一人の男の子として好きになってはいけませんか? 黒猫(ながしょー) @nagashou717

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