第17話 光り。大切な時間を失いました。
目覚めたのはベッド。
ここはどこだとあたりを見渡す。
「やっと起きたわね」
「誰ですか……?」
俺は目を擦って声を掛けてきた人を見つめる。
「雪よ」
「あー雪さんね」
「……」
「んで、うちに何の用ですか?」
「いや、ここ私の部屋なんだけど……」
「そんなバカな」
「ほんとよ」
確かにそう言われてみれば知らないベッド。知らない部屋。
「俺は何でここに?」
俺がそう言うと雪は椅子に深く座りなおして口を開く。
「どこから話せばいいのやら……」
「俺に聞かれてもなぁ」
「何かお前に正論言われると腹立つなぁ」
「どういたしまして」
「……」
はあとため息をつく。
「何で生きてるわけ?」
「あー、知らないんですね……実は隕石が地球に――」
「ちょっと待て、違う」
「んー?」
「あの死のアクセサリーに触れたのになんで気を失っただけなの?」
「死のアクセサリー?」
「学校で聞かなかったの? 道端に落ちてるアクセサリーは基本他の動物が張った罠だから触れちゃダメって」
「あー、そんなこと言ってましたねぇ。それで?」
「貴方……触ったのよ?」
「死のアクセサリーに? そんなバカな」
「桃太郎の証言もあるし本当よ」
「……つまりここは第三の世界だったり?」
「はあ、ほんとにバカ」
雪は椅子から立ち上がって俺のベッドに座る。
俺のベッドではないけど。
「ほぼどの生物も一撃で死ぬような攻撃をあなたは死ななかったってこと」
「それは凄いってことですか?」
「凄いってものじゃない。おかしい。何者なの?」
「ムネトですけど」
「……」
雪は立ち上がる。
「ちょっと来て」
俺も何も言わずに雪についていく。
雪の部屋から出て、やたらと長い廊下を歩き、やたらと大きい扉をゆっくりと開ける。
そこには、見覚えのある部屋。
「王国だ……」
俺が人類から捕まった時、最初にノブナガと連れていかれた場所……。
ノブナガ!
「ノブナガは⁉」
「まだ……」
雪は首を振る。
俺も無言で下を向く。
「とりあえず、座って」
俺は王宮のど真ん中の席に座る。
辺りを見回してもまだ誰もいない。
あるのは無数の椅子。
「ちょっと待っててね」
雪は王宮から出ていく。
一人になった俺は何もすることなく、ぼうっと過ごす。
「やっほ」
聞きなれた声……俺は後ろを振り向く。
「おっ! リデ! 久しぶり!」
リデとは、俺がノブナガと野生生活を送っていた時に仲良くなったゲイマン……とか言う生物。性別は無い。
「ノブナガがオオギンに攫われたんだっけ?」
「うん……」
「大変だねー」
「……それを言いに?」
「いや、違うよー」
リデは俺の隣の椅子に座る。
「ノブナガを――」
リデが口を開けた瞬間に王宮の扉がガチャっと開く。
その瞬間にリデは消える。
「お待たせー」
「あ、はい」
帰ってきた雪の後ろにはハンスが立っていた。
その他にもハンスたちの家来のような人も数人いた。
初めて会った時の同じ場所にある豪華な椅子に雪とハンスは腰を掛けると、直ぐ話を始める。
「えっと……君は……何者なのかな……」
「ムネトです」
「……」
「……異超人……って分かる?」
雪は少し声のボリュームを落として俺に聞く。
ハンスはそんな訳ないだろと言いながら雪の肩をポンと叩く。
「知りません」
前に聞いたことがあるような気もしたが気のせいだろう。
「えっと……基本ステータス分布の隣に、何か『極』とか『羅』とか『特』とかついてなかった?」
「あー……何かは付いてましたよ」
そう言った途端嘘だろとハンスと雪が目を合わせる。
「それでそれで……なんて書いてあったんだ?」
ハンスは少し前のめりになって恐る恐る聞く。
「
「……」
「そんなものないわよ。やっぱり違うのね」
二人はほぼ同時にため息をつく。
「本当にあなたの分布は三誠? 本当の事言ってくれる?」
「えっと……」
俺は記憶を辿る。確か俺は……。
「忘れました」
「……じゃあ攻守速乱は?」
「さあ」
「はぁ……」
雪はため息を付く。だが、それはいつものような呆れたため息ではない。
「って言うと思って、これを作ってみたの」
雪が何かを取り出す。
その何かは、何かの箱の中に入っていた。
「何ですかそれ?」
「名前はまだ考えてないけど……簡単に言うと過去を思い出せる装置」
自慢げに雪が言うと、再び扉が開く。
「ちょっと……それ俺が作ったんだけどなぁ」
「あ! 入ってこないでよ……」
雪は顔を赤くして再び説明を始める。
「この人の名前はエジソン……って言ったら普通分かるけど……分かるわけないよね、あんたには」
「はい。誰ですかね」
「まあめっちゃ有名な頭良い人ってこと」
「なるほど。よろしく!
「……何か気のせいかもしんないっすけどなんか違いますよ僕の名前!」
「そうなのか?」
「……まあいいっす。よろしくムネト」
俺たちがそうやり取りをしていると雪が口を挟む。
「はいっ! 終わり。じゃあこれ付けてムネト」
俺はヘルメットのようなものを渡される。
俺は受け取って直ぐに頭に付ける。
「……何ですか? これ! 怖すぎますよ! っとか無いんだな」
エジソンがボソっと呟く。
「じゃあ起動するね」
雪がそう言った途端。俺の視界が真っ暗になった。
地球滅亡。第二の世界ありました。~バカな俺は偉人と共に人類を最強へ導く~ 華夏猫 @kakaomamecat
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