第215話
「なんか、思ってたより大したことないね。トラップとかもわかりやすいのしかないし、ゴーレムたちは弱いし……ソータさんたちびびりすぎだよ、どんどん行ってみよー!」
「あっ! まてっ……ってもう遅いか……ディーナ、レイラについていてくれ」
ゴーレムたちには攻撃すらさせずに倒したレイラは絶好調だったことで調子に乗ってしまい、何の躊躇もなく目の前の扉を開けてしまう。蒼太も順調に進んでいることに多少の油断があったのか、レイラを止めることが敵わずそのまま彼女によって扉は開かれていった。
「わかりました」
ディーナは蒼太の指示通り素早くレイラの側まで行くと、その腕をつかんだ。
扉が完全に開かれた瞬間、扉の中から目がくらむほどの眩い光が発せられ、一行は光に飲み込まれてしまった。
光がおさまると、その場には蒼太を残して他の面々の姿は消えてしまっていた。
「やはりトラップか。雑魚も弱いやつを配置して油断させておいて進もうとした瞬間に分断か……なかなか効果的なことをやるもんだ」
蒼太は瞬時に強力な魔力の防壁を張ったために飛ばされずに済んだが、レイラ、ディーナ、アトラはそれぞれ別の場所に転移させられてしまっていた。
『これがお主らのいうグレヴィンとやらのトラップか。すごいもんだのう』
古龍は扉が開いた瞬間に上空に飛び、影響を最小限に抑えつつ自前の防壁によってトラップの効果を防いでいた。
「あぁ、飛ばされた先も大したことなければいいんだが……」
蒼太はそう呟くと、最も問題のあるレイラのことを心配していた。
★
「いててて」
飛ばされた際に着地に失敗したレイラがお尻をさすりながら立ち上がる。
「大丈夫ですか?」
そのすぐ側にはディーナがいた。
「あ、あれ? ディーナさん? ここは……どこ?」
レイラがあたりを見回すが、そこはさっきまでいた場所とは全く別の場所で、円形の舞台のような場所の端だった。
「扉を開けた時にトラップが発動して、みんなバラバラに飛ばされたみたいですね」
ディーナは自分たちが置かれた状況を冷静に分析する。
「えっ、あー、またあたしやっちゃったんだ……ディーナさん、ごめんなさい」
レイラはやらかしてしまったことに気づいて、ディーナへと頭を下げる。
「いえ、それに気づいたのなら大丈夫です。以前だったらそのあたりに気づかなかったと思います、ちゃんと成長してると思いますよ」
ディーナは失敗したことを責めずに、今回改善された点を褒める。そのことでレイラの落ち込みは前向きなものへと変わっていく。
「そうか……うん、失敗しても直していけばいいんだよね。あたしがんばるよ!」
反省し、直すことが大事だと認識できていることにディーナは笑顔になっていた。
「いいことです。次に活かしましょう」
「うん、それで……ここはどこなんだろう?」
ディーナが怒っていないことに安心して、レイラは落ち着きを取り戻し周囲を見渡す余裕ができていた。
「気配が感じ取れればソータさんからアクションがあるかと思いますが、おそらくそんなに近くには飛ばされないでしょうね……」
ディーナもあたりを探るが、感じられる気配の範囲が狭いこともあり、蒼太たちの居場所を感じ取ることはできなかった。
「とりあえず、ここから出る方法を探しましょうか」
「うん! あたしは、あっちが怪しいと思うけど……」
レイラが指を指した方向は、二人がいる側とは反対にあり壁に沿って大きな滝が落ちていた。
「確かに、あれは怪しいかも……」
ディーナも同じことを思ったため、二人そろってその滝へと向かうが途中で足を止めた。
「なんか……おかしい?」
「そうですね、何か……音?」
目が届く範囲には何も見当たらなかったが、何かがどこからか音がする。それが二人の耳に届いていた。その音は徐々に二人のもとへと近づいてくる。
「来ます、武器を構えて下さい!」
ディーナは自らもアンダインを構え、レイラもグニルを構えていく。
すると、大きな水しぶきを上げ、目の前の滝から一匹の魔物が飛び出してきた。魔物はクラーケンと呼ばれる巨大なイカの魔物だったが、それは水の中でしか生きていくことができないといわれており、水の上に上がっているとは特殊なことだとわかっていた。
「この魔物がこの場所に飛ばされた我々の試練となるみたいですね」
グレヴィンがただ防衛のためだけにこのようなことをするとは考えづらかった。そうであれば飛ばした先にも何らかの意味を持たせる。それがディーナの予想だった。
「まずはあいつを倒さないとだよね……あたしが突っ込んで行くから、ディーナさんは弓でフォローしてもらっても大丈夫?」
「それは! いえ、わかりました……」
ディーナはレイラの案を止めようと途中まで口に出すが、すぐに取りやめレイラの案を受け入れることにする。
レイラがグニルを構えてクラーケンへと突っ込んでいくが、その道のりは巨体から生える長く伸びた足によって邪魔をされてしまう。
「くっ、これじゃあ近寄れない!」
近距離攻撃タイプのレイラは、クラーケンを攻めあぐねる。足による直接的な攻撃は自身で避けるか、ディーナの遠距離攻撃によって妨害してもらっていた。
レイラが囮を買ってでている間に、ディーナは水の精霊を呼び出し戦闘の準備をしている。何発か矢を放ったが、そのほとんどが通用していないとわかるとすぐさま武器を銀弓からアンダインに変更していた。
「私も行きます!」
遠距離での攻撃を諦めたディーナはクラーケンの足の一歩へと向かい、そのまま攻撃態勢へと移行していく。
「レイラさん、まずは一本一本足を潰していきましょう!」
「了解です!」
ディーナに鼓舞され、レイラは別の足へと向かうことにする。足が多いため攻撃を避けるのも一苦労だったが、全ての足を相手にすると考えていた先ほどより心に余裕が出ていた。
再召喚された勇者は一般人として生きていく? かたなかじ @katanakaji
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