王宮から追い出された姫は風車小屋に隠れていた

不燃ごみ

第1話


風車小屋に姫様が隠れてた



主人公:風車小屋の番人クルード(主人公で、13才の少年。孤児。死んだ父親の仕事を引き継いで、風車小屋の管理をしている。風力を使って小麦などをひいて粉にする粉屋の仕事で生計をたてて、自活している。心優しいが、母親と幼くして別れてしまったため、年上の異性に弱い)

王女ソニア(物語の舞台であるレフカフス王国を統べるネメス王家の18代目の後継者、王女。15才で、王国に君臨する世間知らずの姫様。勝ち気でワガママだが、聡明さもある。魔導士に洗脳された暴徒に王宮を追い出されて風車のあるアルコイ村に潜伏。風車の二階で番人である主人公に出会う)


風車小屋の番人である主人公が、二階にいくと、暗闇から少女の声。

姫「こら、そこの者。この風車小屋の番人か?」

主「へ、そうだけど、あ、あんた、誰だべ」

姫「私は、王女ソニア」

主「ええ、王女様が、何で一人でこんな最果ての村にいるんだべ」

姫「突然王宮に国民がやってきて、城を破壊したから逃げてきたの」

主「兵隊さんは、どうしたの」

姫「軍隊まで仲間になって、城を襲ったのよ」


主「何で王様やお妃様と一緒じゃないんだ」

姫「あなた、ほんと田舎者ね。父王は二年前に北の蛮族との戦で死んだの。母君も昨年病気で亡くなったわ。だから、この国は女王である、こ、の、わ、た、し、が、統治してたのよ」

主「そ、そうなんだ。おいらクルードって言うだ」

姫「クルード、田舎者にしてはいい名前じゃない。齢は幾つなの」

主「13歳」

姫「私より二歳下ね。ふむ、お前が私と伝説をつくる最初の勇者ってわけね」

主「お、おいらが勇者ってか!」

姫「そうよ、国を邪悪な魔導師から取り戻すのよ」

主「お、おいらに、そ、そんなすげえ、手伝いできんのかなあ。孤児で武器ももってないのに」

姫「まあ、武器がないの.。。後で鍛冶屋で剣を買いましょう」



主「け、剣を下さるんだべか」

姫「剣ぐらいこの指輪を売れば、お前が見たこともない名刀を幾つも買えるわよ」

主「それはすごいな。お、おいら、剣士になるのが夢だったんだ」

姫「ふふ、それはお互いに好都合ね!」


古文書を姫が差し出す。



「昔、同じように王宮はのっとられて、その時のご先祖がこの風車小屋で呪いをとく解毒の薬を風にのせて流したら、国民が正気に返ったんだって」

「そうなんだ。こ、この村ってすごい村だったんだべな。全然知らんかった」


ぐう、という姫のお腹。

姫「わ、私じゃないわよ」

主「あ、もう夜になっちまったね。おいら、薪を森で拾ってくるよ」

姫「お、狼に気をつけてね」

主「そこまで、深い森いかないべな」



夕食の準備をする主人公。鍋を恐る恐るのぞきこむ姫。

「なに、魚も肉もないの」

「肉なんて年一回の村祭りでしか食えないもんだよ」

姫「そ、それで良く生きてられるわね」

主「農民なんて、みんなそうだよ」

姫「あっあああ、こんなしょぼい村から出たいわ。早く王宮にもどりたい」

主「.........獣肉の干したのなら、あるけど」

姫「ぶ、無礼者。わ、私に、そ、そのような、薄汚いものを二度と見せるでない」

主「なんでだよ。疲れがとれるんだけどな」

姫「私はゲガレたものは食べないの」

主「ほんと、やんごとなき人はワガママだべ」

姫「うるさいうるさい」


姫だけが、藁のなかにもぐりこむ。呆れ顔で、食事を続けるクルード。


翌朝、長老の家に向かう二人

姫「ねえ、ほんとにその長老というのが、精霊の居場所知ってるの」

主「まあ、村で一番の物知りだからね」

長老「クルード。風車小屋の番もしないで、何しとる。おや、その女の子は誰だい」

姫「私はソニアよ。」

長老「どちらのソニアさんかね」

姫「王女ソニアよ。魔導士に操られた民衆と兵士に城を襲われて逃げて、昨日風車小屋に隠れていたの」

長老「ま、まさか。ほ、本当だべか」

姫「王女を助けるのは、国民の義務ですからね」

長老「あなた様が王女であるという証拠は、ありますか」

姫「このアザを見てごらんなさい」

姫が右腕を差し出す。

長老「ふうむ、これは王族だけが受け継ぐという特別な星形の痣ですな」

姫「納得したかしら。では、村人たちを指導してわらわを助けなさい。そうしてくれたらこの村を10年間無税にしてあげましょう」

長老「.......やめときましょう」

姫「はあ、な、何で、なんでなの。神聖な王女からの依頼なのよ」

長老「私らは、しょせん、無力で無学の農民です。何も手助け出来ませんのじゃ」


風車小屋までの帰り道。とぼとぼと歩く姫とクルード。

姫「何で長老は協力してくれないわけ、王女の依頼なのに」

主「わかんない。孤児のおいらにも親切なのに」

ふと、遠くに視線を投げ掛ける。

主「村を囲むようにそびえるアトス山に強力な魔力を持つ精霊が住んでるって、噂を聞いたことあるで」

姫「では二人で山にいって精霊を捕まえるだけのことよ」

主「で、でも、おいら森のモンスターから姫を守る自信ないよ」

姫「大丈夫、お前は最初に私を見つけてくれた特別の人間。そんなお前に力がないはずがない」

主「そ、そうかな」

姫「だからせめて魚でも調達してきなさい」

主「姫、川で鮎でも釣ってくるだよ」

姫「最低六匹は釣らないと許さないわよ」

主「が、がんばるよ、お、おれ」

たき火から竹で挿された鮎を拾うクルード。

主「お、おいらも一匹食べていいかな」

姫「たったの三匹しか、お前とってきなかったから、あ、げ、な、い」

主「ひどいよ」

姫「農民のしかも、孤児のお前が私のような高貴の人間に話せるだけでも、有難いと思いなさい」

クルード「はあ。。」


アトス山に登る二人。いきなりスライムと遭遇し、戦闘開始。

姫「ほら、そこスライム来たわよ」

主「姫様、棒でそいつをひきつけて」

姫「私をおとりに使うな。なんか、ネチョネチョしていて気持ち悪い」

主「スライムはそんなもんだって」

姫「このこの、えい、とりゃあ」


ようやく森の中心部の祠にたどり着いた二人。

姫「やっとたどりついたわね」


主「スライム一つ倒すのがこんな大変だと思わなかった」

姫「あなた、もっとがんばらないと従者失格よ」

主「お、おら、これでも精一杯やっるんたべ」

姫「お、おだまり田舎者、高貴な、わらわに、口答えするでない」

主「.....田舎者呼ばわりばっかり」

姫「さあて、では精霊の呼び掛けるわよ」

ふたりは、祠を見つめる。

姫「アトス山の精霊よ、わらわはこのレフカフス王国を統べるネメス王家の18代目の後継者、王女ソニア。悪の魔導師ガムルスクに洗脳だれた暴徒によって城を追われた身の上。どうかわらわを助けて、民の呪いをとく解毒の薬を授けたまえ。。。」


祠の中から梟の姿をした精霊が現れる。

精霊「それは、本当に洗脳されてのことかね」

主「こ、声が聞こえた」

姫「黙るのよクルード。精霊よ、何故にわらわを疑うか。この星形の痣を見るがよい。これこそが、王家の血族の証であり。。。」

精霊「本当にその魔導士は、悪なのか。自分の目で確かめたのか」

姫「だ、だって、民衆をたぶらかして女王に逆らわせのよ。悪人に決まってるわ」

精霊「何故民衆は王家には逆らってはならんのだ」

姫「だ、だって私は王家の聖なる血をひいてるの」

精霊「お前が、玉座について、貴族の民への搾取を許したであろう。よく吟味もせずに、税をあげさせて 」

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姫「民が貴族や、ましてや王家に奉仕するのは当たり前だわ」

精「お前が王宮から追い出されたのは、全てお前に徳がないからだ。まずは、それを自分で考えるがよい」

姫は逃げるようにして、祠を離れる。追いかけるクルード



風車小屋に戻った二人。

媛「な、何て無礼な精霊なの」

主「で、どうするべ、"徳”とかなんだべ」

姫「あんな精霊の助けを借りてまで、王宮になんか戻りたくないわよ」

祭りの笛の音が聞こえる。

主「あ、今日は、村祭りのだった」

姫「こんな貧乏なド田舎の村に祭があるの」

主「なんで、そう口が悪いんだべ、姫は」

姫「だいたい、王女が、村祭に出たら大騒ぎになるわよ」

主「大丈夫、長老が姫の素性は誰にもいってないから」

姫「あ、そう。。。着るものもない」

主「死んだ母ちゃんの着物きなよ。ほら、これだよ」

姫「い、嫌よ、こんなみすぼらしいの」

主「そ、そんなみすぼらしいかな。母ちゃんが大事にしてたらしいんだけど」

姫「わ、わかったわよ。着るから外出てなさいよ」


素朴な民族衣装の着物をきて、姫が現れる。はしゃぐクルード

主「死んだ母ちゃんみたいだ」

姫「私、そんな老けてないでしょ」

主「母ちゃんは、おらが5歳の時死んだからとっても若かったんだ」

姫「そうなんだ、でも、私まだ15だけど」

主「おらが、そう思ってるだけだから、許してけろ」

姫「しょうがないわね、いくわよ」

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屋台のようなもの、見て歩く。

姫「なに、あの良いにおいがするのは」

主「あれは、森の果実をスライムで煮込んだ飴だよ」

姫「スライムなんか食べられるの?」

主「普通のは、食えないけど。ちょっとだけ食える種類もあるんだべ」

姫「私はあの林檎飴とお餅みたいなの食べたい。ええと、まだ指輪を売ったお釣りがあるわよね」

主「おらが払うって、母ちゃんの服着てくれたから」

姫「そ、そんな、気を使わなくていいのよ。着てみたら結構気に入ったわ。似合ってるでしょう」

主「も、もちろんだべ」

二人は歩いてると、村人の劇場に通りかかる。

二人は演劇を見つめる。演劇では鸚鵡が舞台を飛び回り、皆がそれ呆けて見るシーンがある。

「あ、青い鸚鵡だわ、王家の古文書に出ていた」


壇上で男が叫ぶ。

男「王家の傲慢によって、民との絆は絶たれた。怒りに忘れた暴徒は王を王宮から追い出した」

姫「ま、まるで私のことじゃない」

主「そうだべな」

男「反省した王は、チュータイの儀式で魔力を得て国民の呪いを解き放った」

主「ええ、解毒の薬を風に流すだけじゃなかったんだべか」

姫「ほ、ほんとね。でも間違った伝承じゃないの」

主「やっぱり、もう一度、あの精霊に会いにいこうよ」

姫「そ、その前に私なりの答えを見つけないと」


長老の家にまた、二人は訪れる。

姫「精霊に説教されました。自分に“徳が”ないから、王宮から追い出されたんだって」

長老「で、己を変わるために何をすればいいとお考えかな」

姫「私も農作業を手伝わせて下さい」

長老「良い心がけですな。ただ、今は秋の収穫後で手伝ってもらうことなどないのですじゃ」

姫「そ、そうなの」

長老「では、クルードの粉牽きの手伝いしてくだされ」


風車小屋の二階の粉ひき作業現場。


姫「この粉を全部一日で牽かないと駄目なの」

主「そうだべ。でも、姫は見てるだけで、いいから」

姫「馬鹿言わないで。私は麦の袋を運ぶわ」

主「無理すると、腰にくるど」

姫「おばあさんじゃないんだから、うわあ、お、重い」

主「だから、いったべな。それはオラがやるから、小屋の掃除してくれ」

姫「それしか、やれることないか」

主「掃除だって、大事な仕事だべ。なんせ、食べ物を扱ってる神聖な所だから」

姫「わ、わかったわ」


小屋の複雑な粉牽きの機械を巧みに操るクルード

姫「あんた、すごいのね」

主「死んだ父ちゃんが、教えてくれたんだべ」

姫「あああ、私、何にも知らなかった。パンの粉がこうして牽かれてたなんて」

主「王宮にいたんじゃ、知らないのも仕方ないべ」

姫「自分で学ぼうともしなかった。

だから、政治も大貴族のいいなり。もう、恥ずかしい」

主「そうだべか」

姫「皆の苦労も知らないで増税の政令文書に何の考えもなくサインしたの」

主「反省したなら、変われるべな。姫様はまだ若いんだし」

姫「なんか、あんたの方が年上みたいね」

主「やたら落ち込む姫なんてらしくねえべ」

姫「何よ、それ。せっかく誉めたのに」


姫とクルードはまた精霊(梟)を訪ねる。

精霊「おやおや、姫様は随分薄汚れたようじゃのう」

姫「それでも、民の苦楽は少しわかりました」

精霊「統治者の責任が分かったかね」

姫「王宮から追い出されのは、全て己の過失です。民の生活に目を配れなかったゆえの」

精霊「よい自覚じゃ。ではお前にこの黒い指輪を授ける。小僧にはこの青い指輪を授けよう」

姫「ただの指輪じゃないですか」

精霊「この黒い指輪をつけたお前はその小僧の飢え、病苦、孤独、貧困、全ての苦痛を同時に感じることになる」

姫「えええ、まるで一心同体じゃない。じゃあ、私の苦痛はクルードが感じるの? それって彼に悪いわ」

精霊「それはない。ただお前だけが小僧の苦痛を一方的に感じるのだ」

姫「そ、そうなんだ。でも、ちょっと不公平かも.......」

精霊「お前はこれ以外に王宮には戻れんぞ」

姫「そ、そんな」

精霊「国民の最低辺にいる小僧の苦痛を常に共有することでお前は、国民との失われた絆、チュウタイを取り戻すことができるのだ」

姫「指輪をはめるとな、何が起きるの」

精霊「小僧はチュウタイの力を使って、お前をまた玉座に導こう。ただし、指輪を着けたら二度と抜けない」


風車小屋の二階で粉ひき作業する二人。

姫「あ、あんた、また、お腹減らしてるでしょう。指輪のせいでこっちにも伝わってくるのよ」

主「だって、朝ほとんど食べてないんだべ」

姫「な、なんで食べてないの。あんた先に食べたって言ったのに」

主「食べ物がちょっと足りないんだべ」

姫「そ、そうなんだ。気づいてあげられなくて、ごめん」

主「でも、毎日、ふ、二人だと腹は減るけど」


姫「ダイエットになる?」


主「いや、楽しんべ」


姫「……わ、私、本当に馬鹿だった。昼はあんた食べていいから。私、我慢する」

主「いいだべよ。二人で分けるべ。なんたって姫様はやんごとなき方だから」


姫「王宮にもどれたら、宮廷料理を毎晩食べさせてあげるからね」


長老が、血相変えて、二人の前に現れる。

長老「姫様、逃げなさい。魔導士が、あなた様を捕らえにきた」


こっそり風車の裏口から出るが、魔導士が待ち受けていた。

魔「こんな、ところに隠れていたか、王女ソニアよ」

姫「魔導士ロクセル」

魔「国民に見捨てられて、その小僧だけが味方か。落ちぶれたものよ」

姫「国は譲ってもよい」

魔「な、に」

姫「ただし、お前は何を求めて王になりたいか」

魔「我が名を歴史に刻むためよ。いずれ兵をあげて大陸の覇者とならん」

姫「民を無益な戦争に巻き込むのか」

魔「民は英雄の道を共に進むことを誇りとして、死ねる」

姫「ならば、お前に国は譲らん」

魔「ふふふ、誰も頼んでおらん」

突然魔導士が、人間を動物に変える魔法を姫にかける。

魔「ルキウス(変化触媒)!」

姫「あ、体が熱い」

姫の体は縮み、青い発光体となる。

そして、光が消えて地面には気絶した鸚鵡がいる。

魔「ほう、お前の好みの動物は鸚鵡か」

主「姫を元にもどせ」


魔「お前は美しい鸚鵡となって、我が側で、英雄の事業を目撃するがよい」

鸚鵡が、突然目覚めて魔導士の顔を嘴で攻撃する。

魔「馬鹿が逆らいおって、食ってやる」

 魔導士が、鸚鵡を強く握り絞める。鸚鵡が、悲惨な叫び声をあげる。クルードが、魔導士に体当たりをする。

主「姫を傷つけるなら、オラをやれ」

魔「よし、お前から先だ」

魔導士が、クルードへ呪文の詠唱をはじめる。

魔「サウル(火炎地獄)」

地中から、炎が吹き出す。

主「姫様、に、逃げて」

鸚鵡が炎を避けるように、とびあがる。鸚鵡から、青い羽がこぼれる。青い羽が氷の雨のように火を消す。残りの羽は風にのって、風車を背景にして美しく各地に散っていく。

魔「なんだと、火が羽で消えた」

 いつのまにか、精霊(梟)が空に現れる。

精霊「チュウタイの地場ができた、小僧、指輪を奴に向けてみろ」

主「こうだべか」

 黒い指輪から青い炎が、魔導士に向かって吹き出す。

魔「うむ。これが、二百年前に王家を救った魔法か、だがこれならどうだ」

 魔導士が、盾でクルードの炎を避けながら、呪文を唱える。

魔「ラザルキ(電撃霧魔)」

 蠍座の形をした、電撃がクルードを襲う。なんとか盾でしのぐが徐々に溶けていく。

主「もう、持たないべ」

精霊「姫よ、電流に飛び込め。小僧は指輪をむけたまま」

姫「む、無理よ」

精霊「チュウタイの力を信じろ」

姫「.......わかったわ」

鸚鵡が電撃蠍座に飛び込む。

主「姫、ええええ」

2つの指輪から光が、飛び出してぶつかる。光は小さな渦を作り巨大な水色の渦巻きになって拡散していく。

魔「な、何だ、これは」

 渦巻きが、消えたあとに二人の姿は消えて、二メートル以上ある巨大な武人が立っている。

武「よくも、我が子孫を痛めつけおったな」

魔「き、貴様は何者だ」

武「我は500年前にこの王国を築いたモーフトスだ」

魔「バカな。ガキどもはどこだ」

武「二人は我が肉体内で庇護している。我が子孫から、王国を奪わんとする不埒者、罪を購え」

 武人が宝刀スクエスカルで切りかかる。魔導士の盾は、両断されている。

魔「ぐひひひ、わしにかまけていて良いのか。民が心配ではないのか」

武「どういうことだ」

魔「城の兵士たちに、首都を破壊するよう命じたのさ」

武「何だと」

魔「今ごろ子供や赤子を殺して、その生き血を吸っておるわ」


そこへ、兵士たちがやってくる。

魔「おお、早いな、兵士ども。この亡霊に矢を放て」

兵士「我らは、もはや貴様の命を受けぬ。王女を迎えにきた」

魔「なんだと」

兵士「我らは悪夢から覚めた。青い羽が空を漂うのを見て」

武「ぐはは、策は不発だったな。覚悟は良いか」

魔「馬鹿め、お前ら全員殺してやる」

魔導士が、突然空中を飛翔して武人と兵士に光の矢を大量に浴びせる。

魔「リスペリオン(雷矢砲)」

武「無駄だ」

 武人の髪が延びて自分と兵士の頭上に巨大な雲を作り矢を防ぐ。

魔「お前もバケモンか」

 魔導士が、諦めて地上に降りてくると、武人が呪文の詠唱をはじめる。すると青い羽が大量に空から降ってくる。その背後で風車がゆっくり回転していく。

武「二度と我が王国に足を踏み入れるな」

魔「と、鳥の羽で何が出来る」

武「フレーラム(蒼刹拘束)」

大量の青い羽が魔導士の体に張り付いていく。何度も払っても、青い奔流のように魔導士の体を包み込む。

魔「ぐえええ、い、息が出来ぬ」

 無数の羽に包まれ青いサナギのようになり、魔導士は窒息死する。

 いつのまにか、武人の姿がなくなり姫とクルードが地面に横たわっている。家臣団が二人を介抱する。

大臣「姫、しっかり」

医師「大丈夫だ。傷は深くない」

 息をふきかえした姫。

姫「み、みなの者、よくぞ参ってくれた」


(別れの場面)

 家臣団と離れて、姫がクルードと向き合う。

姫「クルードも王宮にきて、私のそばにいて」

主「む、無理だべ。おらに、そんなきらびやかな所なんて」

姫「馬鹿ね。私の恩人だよ。しかも、同じモーストフ公の子孫でしょ。彼が言ってたじゃない。それなら、近衛隊長とかになる資格は十分よ」

主「姫様の馬鹿」

姫「な、何でよ」

主「国は姫様のオモチャじゃないだべ。皆が納得しないことやったら、また王宮から追い出されるべ」

姫「ほ、本当だね。私、何もわかってなかった」

クルードが、姫に指輪を見せつける。

主「おらは、姫様に常に貧しい者の苦しみを伝える役割がある」

姫「それじゃあ、私はお前にどうやって報いればいいの」

主「たまに、思い出してくれればいいべな」

姫「いつか、私より君主に相応しい者見つけたら、ここに帰ってくる」

主「そんな、馬鹿なこというでねえ」

姫「待ってて」

主「さよなら」

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王宮から追い出された姫は風車小屋に隠れていた 不燃ごみ @doujjimayu

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