戦士の休日

@山氏

戦士の休日

 目を覚ますと俺は立ち上がり、服を着替えた。

 いつも持ち歩いている装備は持たず、家を後にする。

「今日は一日暇だな……」

 欠伸をしながら、街を歩く。

「げっ」

 声が聞こえて顔を上げると、嫌そうな顔をした女性が目の前にいた。

「げっ」

 俺も同じ反応をしてしまう。

 彼女は霞。騎士団員の一人だ。どこにも所属することなく活動する俺を良く思っていないのか、よく絡んでくるめんどくさい女。

「……」

 俺は特に話しかけるでもなく、霞の横を抜けようとする。

「ちょっと待ちなさいよ」

 霞はそんな俺の手を掴むと、自分の方に引っ張った。

「なんだよ。せっかくの休日くらい、のんびりさせてくれないか?」

 口早にそういうと、霞は困ったような顔をする。

「私だって……」

「何度言われても、お前らのとこに行くつもりはないぞ。俺は好きにやらせてもらう」

「そういうのじゃなくて……」

「じゃあなんだよ」

 霞は少し迷ったように目を泳がせると、意を決したように俺の目を見た。少し顔を赤くしながら。

「ちょっと、付き合ってほしいの」

「はぁ?」

 俺は顔を歪めて霞の目を見る。

 その表情は真剣そのものだ。

「な、なんで俺が……」

「え、えっと……その……暇そうだったから?」

「なんだよそれ」

「いいから、どうせ休みで暇だったんでしょ? 行くわよ!」

「おい!」

 霞は俺の手を引いて歩き始めた。

 

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