第3話 追放
「では裁判を始める。長老よ罪状を読み上げたまえ」
「懲役百年の減刑は充分に果たされたとは言えません」
「あれは絶対にあの男の……」
「邪し……に違いない」
「いや、魔お……に違いない」
「静粛に」
「ですが我々エルフは嘘つきではありません。懲役百年は減刑して追放の刑にしたいと思います」
割れんばかりの拍手が起こった。
えー、一日一回、石を握るだけの生活を堪能したかったな。
追放ですか。
森を無事抜けれるかな。
だって、魔獣が住んでいるなんて思いもしなかったよ。
こんな事なら山で暮らそうなんて考えなきゃ良かった。
とにかく追い立てられるようにエルフの里を出された。
「おい、私を置いていってもらっては困る」
「エメラルさん、なんで」
「エルフは嘘をつかないのだ。一生面倒を見てやるって言っただろう」
「ぐすん、エメラルさーん」
「寄るなうっとうしい」
「何もさけなくても」
「うるさい走るぞ。ちんたら歩いていたら町まで凄く掛かる」
「待って、待ってー」
うわ蔦で顔を叩かれた。
うっとうしいな。
砂浜を想像するんだ。
『捕まえてごらんなさい。行くぞ捕まえちゃうぞ。きゃはは。うふふふ』って想像してて虚しくなった。
あれ、服がボロボロだ。
劣化さーん、服に仕事しないでよ。
町に着いた時にはスーツが半ズボン半そでになっていた。
「くふふふ。変な格好。しかし、あれだけ当たって無傷とはな」
「何です」
「いや良い」
「エメラルさん、劣化が全て悪いんです」
「よし、町で服をそろえるぞ」
子供に指を差されて恥ずかしい思いをしながら歩きなんとか洋服の店に辿り着いた。
店に入った途端下着姿になる俺。
劣化さーん、頼むよ、仕事しないで。
店員に笑われながら服を身に着けなんとか文明人に復帰できた。
「冒険者の登録に行くぞ」
「えー、三食昼寝付きじゃなかったんですか」
「お前には期待してない。というか手をだすな」
無能宣言頂きました。
久しぶりの無能宣言。
仕事はこうでなくっちゃ。
「はい、お茶を飲んでおきます」
ウェスタンドアを開けて冒険者ギルドに入る。
俺達が入ると視線が絡みついた。
「おい、おっさん依頼か。依頼なら別の階だ」
「登録です」
「冗談だろ。こんな弱っちいのが」
「辞めろ。私の連れに手を出すな」
「女に
男がごつい小手で俺を突き飛ばす。
「くそ、
「言わんこっちゃない。私の連れは劣化スキル持ちだ。装備をボロボロにされたくなかったら挑まない事だ」
『えっ、劣化能力ってあの錆を作るだけの』というざわめきが起こる。
続けて『そんな馬鹿な』という声が広がった。
どつかれた時はひやっとしたけど、劣化さん良い仕事をする。
受付で用紙に記入する。
名前はハジメ。
種族は『はははは』
スキルは『はははは』。
特技は謝る事と昼寝。
得意武器は無し。
出身はエルフの里。
よし、埋まったぞ。
「からかっているんですよね」
「すいません。変なステータスですいません」
「これ本当なんですか」
「ええ。証拠を見せます。ステータス・オープン」
――――――――――――――――
名前 ハジメ・サンリュウ
種族 はははは
戦闘力 はははは
スキル はははは
――――――――――――――――
「家名持ちでしたか。失礼しました。本当にこんなステータスなんですね」
「すいません」
「いいですよ。前例がなくとも冒険者にはなれます」
「いつまでも喋ってないで行くぞ」
「あっ、待ってー」
連れてこられたのは森だけど、出てきたゴブリンが俺の前に来ると決まって震えて動かなくなる。
そんなに劣化さんて恐いのかな。
確かに装備している棍棒が壊れたら、ゴブリンの小さな手では
得物を持つと気が大きくなるとギャング映画で言っていた。
そういう事だろう。
ゴブリンはエメラルさんの矢によってご
喜んでゴブリンの耳を削ぐエメラルさん。
エメラルさんには逆らわない事にしよう。
劣化さんて仕事する時としない時があるから、いま一つ信用できないんだよな。
ゴブリンを十匹狩った所で今日の狩りは終わった。
これで宿代はでるとエメラルさんは言っていた。
俺って何もしてないな。
ヒモばんざい。
一生養ってもらえる俺って、もしかして勝ち組。
そんな事を考えていたのが、いけなかっただろう。
街道の先で馬車が襲われている。
馬車は家紋入りだ。
係わりたくないな。
盗賊達は黒い布を顔に巻いて隠している。
これは試練だろうか。
試練、恐ろしや。
「何手を合わせているんだ。盗賊に襲われている馬車を助けるぞ」
「ええっ、止めとこうよ」
「ぐちゃぐちゃ抜かすな。もう養わないぞ」
「すいません。盗賊退治します」
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