第22話 占いは当たることもある。

 琴葉の提案に対し、


「私もご一緒していいんですか?」

「はい、早見さんが良ければですけど……」

「私は構いませんが……」


 早見はそう言って、俺の方をちらっと見る。

 おそらく、俺はどうなのか、と聞きたいのだろう。

 

「俺も大丈夫だぞ」


 別に二人が三人になったところで問題はないと思い、そう答えた。


「それなら、喜んでご一緒させてもらいますね」


 そんなこんなで、早見を含めて三人でショッピングモール内を歩くことに。


 ◆◆◆



「むぅぅ……。難しいです」



 現在、俺たちはゲーセンに来ている。


 あの後、店を数軒見て回り、早見と琴葉は随分仲良くなった。そして、二人は談笑しながら歩き、俺は「これ、やっぱり俺いらなくね?」と思いながら少し後ろを歩いていた。


 が、早見が「あっ」と声をこぼし、一瞬立ち止まった。そして、早見が見ていた方に視線を向けると、ゲーセンが。

「入りたいのか?」と聞くと、「……はい。実は、一度も入ったことがなくて……」とのこと。


 そんなわけで、早見のゲーセンデビューを果たすべく、入店したのである。

 

 早見が挑戦しているのは、猫のぬいぐるみのUFOキャッチャー。

 早見はそれを見た途端、「可愛いので、これ欲しいです!」と、目を爛々と輝かせ、すぐさま100円を投入していた。


 勝手な想像だけど、早見のベッドの上には、ぬいぐるみとかたくさん置かれてそう。あわよくば、それを抱きながら夜寝ててほしい(願望)。


 すでに10回くらい挑戦しているが、なかなか取れそうにない。

 少し持ち上がり、そのまま落下。これを永遠リピートしており、早見のテンションも落下中。


「お兄ちゃん、取ってあげて。こういうの好きでしょ」

「そうなんですか!?」

「たしかに好きだが……」


 一時期、UFOキャッチャーにハマっていた時があり、ゲーセンに通ったりYOUTUBEで上手い人の動画を見たりしてたことがある。

 ただ、一つ言わせてほしい。

 好き=得意、というわけではないことを。


 これは多分、店側が設定した金額に達するとアームが強くなるという、いわゆる「確率機」だ。よって、それまでに取ろうとするなら、それなりに技術が必要となる。


 上手い人はタグに引っ掛けたり、すきまに挟んだりして取ることができるが、正直俺にそんなテクニックはない。


 ただ、そんな期待を込めた目をされてしまえば、やるしかないだろう。

 

「仕方ない。本気を出すか……」

 




「ほら」


 俺は、なんとかゲットしたぬいぐるみを早見に手渡す。


「いいんですか……?」

「俺が持っていても仕方ないからな」

「ありがとうございます……。そんなにお金を使ったのに、すみません……」

「ま、まあ、気にするな」


 そう。

 ぬいぐるみはゲットできた。

 が、お金をけっこう費やしてしまったのだ。


 途中、早見に「無理して取らなくても大丈夫ですよ……?」と心配顔で言われたり、琴葉に「お兄ちゃん、意地はりすぎ」と呆れられたりしたのだが、ここでやめてしまったら負けだと思い、取れるまで続行した。


 その結果、4000円ほどかかってしまった。

 高校生にとってこの支出は小さくない。


 だが、


「大事にしますね」

「おう」


 ぬいぐるみを両手で抱き、嬉しそうに微笑む早見を見てしまえば、この笑顔を見れただけで頑張った甲斐があると思える。

 

「さて、そろそろ帰るか」


 スマホで時間を確認すると、もう17時を過ぎていた。

 そろそろ帰る頃合いだろう。


「そうですね」

「うん」


 俺の提案に異論はないようで、早見と琴葉も小さく頷いた。




「今日はありがとうございました」


 ショッピングモールから出たところで、トイレに行った琴葉待っていると、早見が穏やかな笑みでそう言った。


「こちらこそ、琴葉と仲良くしてくれてありがとな」

「はい、すっかり仲良しになりました。それにしても、冷さんは琴葉さんには甘々なんですね」

「そんなことはないだろ。まあ、いつも家事をしてかれてるし、感謝はしてる」

「ふふ、いい兄妹ですね」

「まあな……あ、そこのベンチに座らないか?突っ立ってるのもなんだし」


 すぐ近くにちょうど二人が座れるくらいのベンチを見つけ、早見にそう促す。

 早見も「そうですね」と了承。


 そのままベンチの方に歩き出したのだが──


「ひゃっ!」

「……大丈夫か?──あ、」


 後ろを振り向くと、地面が滑りやすくなっていたのか、早見が滑って尻餅をついていた。

 幸い怪我はなさそうだ。


 しかし、その体勢がよくなかった。


 後ろに手をつき、足はM字に開くような形に。

 早見の服装はスカート。

 ということは、その中身が見えてしまうわけで。

 パンチラどころか、もはやパンモロ。

 純白のパンツが露わになってしまっており、ご馳走様というか、なんというか。


「……大丈夫です。

 ……えっと、どうかしましたか?──あっ!?」


 ようやく気づいて、早見はスカートを慌てて手で押さえつける。

 そして、潤んだ目で俺を見つめ、


「……み、見ましたか……?」

「……すまん」

「〜〜〜〜〜っ!!!」


 早見は、瞬く間に、顔を耳まで真っ赤に。

 そして、少しの間ぷるぷると震えた後、勢いよく立ち上がり、


「す、すみません!先に帰りますね……!」


 そのまま足早に立ち去ってゆく。

 えっと、なんかごめん……。そして、ありがとう。


 それからすぐに、琴葉が戻ってきた。


「お待たせ──って、あれ?お兄ちゃん、早見さんは?」

「先に帰るって」

「あ、そうなんだ。もう少し話したかったな」

「俺らもそろそろ帰るぞ」

「うん」


 その後、帰路につきながら、ふと思った。


 占いって、当たることもあるんだな……。

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美少女が俺を離してくれない(物理的に)。 @ngky

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