ゆっくり

 「リア充ども、爆発しろ。」ボクは街中のクリスマスツリーに向かって小さく、でもハッキリと呟いた。行った後はなんだか厨二臭いと思い、照れた顔を隠すために下を向くと、より惨めな気持ちになった。

 クリスマスの一週間前、ボクは失恋をした。始まってもいない恋を失った。だらだらとコンビニのバイトで客を待っている間、あの娘が、そう、あの娘がボクに聞いてきたのだ。「クリスマス、予定空いていますか」と。ボクは(?)「空いています。」と期待も込めて勢いよく返事をした。すると返事を聞いたあの娘の眼に星が光(!)ボクの期待は確信に変わった。

「じゃぁその日、私とシフト変わってもらえませんか。」

……ウサギの気持ちになった。カメに価値を確信してだらだらしていたら負けたア、みたいな。ボクは「イイデスヨ」と最後の気力を振り絞って言った。するとどうだあの娘は、泳ぐ僕の目をしっかり捉え

「ありがとうございます!」と両エクボで言った。「ちくしょう、そのエクボで言うか。」ボクは心の中で叫んだ。

 残りのバイトの時間、ボクは失恋をする前の時間に戻れと思った。時計の針がボクを嘲笑うかのようにだらだらと進んでいる気がした。クリスマス当日のバイトは行こうと思う。たとえその日はナマケモノみたいになっていようとも。ボクはだらだらと自分の仕事に戻った。

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短編集 1 あにょま @Anyoma

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