「今日の一位は、乙女座のあなた。ふとした所で新たな発見があるでしょう。」と、朝、テレビの星占いのコーナーで言っていた。普段は占いの類は信じないのに、自分の星座が一位だった今日は、ちょっぴりだけ信じてみることにした。そして、(「似合わぬ乙女チック」という心の声を無視して)心の中でも願っておいた。「良いことが一つでもありますように。」と。

 家を出て通学路を歩く私の気持ちは、いつもに比べて高まっていた。道端の水たまりの中をわざと歩き、「ぴちゃっ」という、音を楽しみながら歩きいつも通っている踏切の前に着いた。今日わ待たずに行けるかなと思ったけれども、やっぱりダメだった。踏切が開くのを待っている間に私は一輪の花を見つけた。名前がわからずスマートフォンで写真を撮り、検索すると「コスモス」と出てきた。私は「コスモス」と声に出してみた。そっと言える名前のせいか、なんだか可愛らしい名前だな、と思った。いつもより早く踏切が開いた気がして、私は振り返りながらコスモスとお別れした。

 学校に到着しても、コスモスが気になり、もう一度「コスモス」と検索をした。そしてコスモスの別名が「秋桜」だというのを知った。それを見つけた時、夏の今にそぐわない季節外れのその字を見て、なんだかコスモスが私にすっと、寄ってきてくれた気がした。

 朝の占いも意外とあてになるのかもしれない、だって私は夏に「コスモス」という秋の桜を発見できたのだから。

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