「ライトノベル読んで何の役に立つの?」と聞かれたときの、もっともクールな回答

赤月カケヤ

「ライトノベル読んで何の役に立つの?」と聞かれたときの、もっともクールな回答


表題について、一番良い答えは、


「役に立つわけないじゃん。馬鹿なの?」


だと思う。


なぜなら、「役に立つ」と答えた時点で、ラノベを侮辱する意味となるからだ。高度なひっかけ問題である。



「豚に真珠」という諺がある。

豚に真珠を見せても、その美しさが理解出ず、「なんだ食べ物じゃないのか。価値ないじゃん」と言われてしまうことのたとえだ。

注)実際に豚がしゃべったわけではありません。CM上の演出です。



「役に立つ」は「実用的」という単語に置き換えられる。実用的を進化論的に考えれば、

 ・生存に有利に働く

 ・子孫を残すのに有利に働く

ことである。


これを人間に当て嵌まると、

 ・頭が良くなる(知識含む)

 ・仕事に役立つ

 ・お金儲けできる

 ・異性にモテる

 ・社会的ステータスが上がる(ボランティア含む)

ってな感じなわけだ。


当然ながら、ここに「作品を愛でる」という「真珠」に当たる部分はない。豚にとっての「食べ物」しかない状態だ。


なので、表題を言い換えると、


「ラノベって食べられるの? 食べ物じゃないから価値ないよね? ブー! だって、お腹ふくれないじゃん。ブー!」


に対して、


「あれは真珠だ。おまえみたいな豚野郎には理解できないものだ」


と言ってやるのが正解なのである。



〈不幸のはじまり〉


本来であれば、作品の価値を理解できない人に、無理やり理解させる必要なんてなかったはずだが、さまざまな思惑が交錯した結果、とある画期的な方法が生まれた。


作品の価値を金額や売上で表すことである。


作品が理解できない人も「この絵は2000万円するんですよ」と言われれば、「に、2000万!?」と目の色を変えた。


当然そこには、作品を純粋な目で見ようとする気持ちはない。


作品を理解できる人は、「売上や社会的評価よりも、自分の心がどれだけ動かされたかが大事」と考える傾向が強いが、


そうでない人は「世界で一番売れているはハンバーガーとコーラなんだから、それが一番美味いに決まっているだろ」という価値観なのである。


売上重視の作品を嫌悪するクリエーターが多い理由は、そこにあると思う。



〈作品という言葉について〉


今回はずっと、「作品」という単語を使い続けてきた。

これは「実用的」の対義語として使用していたからだ。


これを「芸術」と表現してしまうと、「芸術の対義語は娯楽じゃないの?」と無駄なつっこみを受けてしまう。


「作品」の中に芸術作品と娯楽作品があるイメージで、実用的はもっと大きなレイヤーでの別のカテゴリになる。


数学の参考書を見せて、「これは芸術か? 娯楽か?」と問えば、「その答えは極めて難しいが、おまえが馬鹿ということはわかった」と失笑されるだろう。



さて、この「娯楽」とやらの概念が、とても面倒くさい。


娯楽とは、楽しい、面白いといった感情を抱かせるもので、適用範囲が異様なまでに広い。


ギャンブルもそうだし、スポーツやレジャー、映画鑑賞やお笑い番組、果ては仕事や勉強も楽しいと宣う人もいる。


そのため作品における「娯楽」は、楽しませることに特化した褒め言葉としても使えれば、作品としての意味が薄れた貶し言葉としても使える。つまり、相手にバレずに嫌味が言える。

(そういや、何かの漫画で、女の子ふたりが互いに嫌味を言い合って火花バチバチ状態だったのに、表向きは褒め言葉だったので、それを見ていた主人公が「仲良いみたいでよかった」と発言するシーンを見た気がする。うろ覚え)


本来は、心を動かされたことと、おもしろいと思う気持ちは別物だが、ボキャブラリー的にそこが混じってしまったのが、混乱の原因だと思われる。でも、それ分けて考えろって言われても難しいよね。

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