終章 本懐

それからというもの、僕はなにかと理由をつけて美波と一緒に過ごしたいと思うようになった。彼女と一緒に過ごす時間は、何事にも代えがたい時間になっていった。誰も美波の代わりになることはできないし、誰も代わりにならなくて良い。僕は夢中だった。今までろくな恋愛をしてこなかった分、恋に落ちるのは一瞬のことだった。


僕は、美波と出会ってから半年後、美波に告白した。少し間をおいてから、美波は相変わらず静かに、そして優しい微笑みを浮かべたまま、僕を受け入れた。




今日は、僕の家で美波と会う予定がある。美波と一緒にいる時間が長ければ長いほど僕は癒される。美波の喜んだ顔、美波の怒った顔、美波の美波の哀しんだ顔、美波の笑った顔。美波のどんな表情も、僕の心を安らかにしてくれる。


最近では、女性に対して初めて抱いた嫉妬心や独占欲すら愛しく思えてしまう。それほどまでに僕は美波を愛しているのだ。


美波は、邪心のないひたむきな愛や、見返りを求めない愛、その人のためなら自分の命を犠牲にしてもかまわないというような愛のことを『純愛』と呼ぶことを教えてくれた。


 もし、『純愛』をそういった意味で定義するのならば、僕が彼女に抱いているこの感情は間違いなく『純愛』だ。断言できる。僕は幸せの絶頂にいる。僕は純愛を手に入れた。隣で美波が寝ている。寝顔も狂ってしまいそうなほどに可愛らしい。そんな幸せな景色と彼女が隣にいる安心感に包まれていると、僕はいつの間にか眠ってしまった。






━━━僕は今まで味わったことのない強烈な腹部の痛みで目を覚ました。隣には相変わらず美波がいるが、様子がおかしい。美波はとても幸せそうな表情で僕の腹部に包丁を刺していた。僕の腹部から鮮血が噴水のように溢れている。


美波に教えてもらった純愛の意味をゆっくりと思い出し、美波の本意を理解すると、僕は満たされた。


僕は純愛を手に入れた。

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純愛 のた @NoahNoah18

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