「そもさん!」「せっぱ!」「百合とは何か?」「巨大な感情のぶつかり合いである」「巨大な感情とは何か?」「それは言葉では表せないものである」
こんな問答が実際にあったかどうかは知りませんが(多分ない)、百合という概念は言葉で表すのはなかなか難しかったりします。そういう意味では本作は百合というジャンルにもっともふさわしい内容と言えるでしょう。なぜならこの作品の登場人物二人は互いの言葉が通じないのだから……。
物語となるのは文明が滅んだ未来。獣人の少女シーシェは成人の儀式を迎え、かつて『ヒト』が遺した『遺物』が多く眠る灰の森を訪れます。しかし、そこで彼女が見つけたのは遺物ではなく大昔に滅んだはずの『ヒト』でした。なぜヒトがここにいるのか、ヒトは何を目的に行動しているのか、言葉の通じぬシーシェにはそれがわからないわけですが、とっても暴力的なファーストコンタクトを経て、二人の異文化交流が始まります。
ポストアポカリプス世界で描かれるガール・ミーツ・ウーマン。最初は互いを警戒していた二人が徐々に互いを理解していき、最終的に待ち受けるのは巨大な感情の衝突(物理)!
わずか7話で互いの感情の高まっていく過程を丁寧に描写し、獣人であるシーシャの視点から見慣れぬものとして「ヒト」を描写する手つきも巧みで、百合好きもSF好きも読んで損はしない内容になっていますよ!
(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=柿崎 憲)