人間が嫌いだ

さんもー

人間が嫌いだ

私は猫。ただの道端に居る、人間なら誰しもが見かけたことであろう“ただの”野良猫だ。

私の住処は基本的には決まっていない。毎日毎日色んな人間の家の下の隙間を転々としている。毎回見つからないようにコソコソって移動してそこで過ごす。人間達に見つかるとおっかないからね。私を見つけると人間は私を殺そうとしてるのでは?と思うくらいの勢いで追い出していく。全く酷いもんだ。

生活での問題は住処だけでは無い。生きるのに1番大事なのは食事だ。私とは違いご主人様が居る飼い猫はご主人様からご飯を貰えるのだから全く羨ましいものだ。だが私は“野良猫”。飼い猫とは違いご主人様が居ない猫。すなわちご飯を貰えるなんて事は滅多にないのだ。自分で狩りをしなければならない。ネズミや蛇。主にこれを狙うがそんな都合よく居るものではなく、大体が人間が捨てている少し余っているご飯を私は食べるのだ。これもまぁ〜人間に見つかると怒られる。本当に住みにくい世界だ。

私も元は皆が可愛がってほっぺをスリスリしたり撫でたりしている飼い猫と同じだったのにどうしたものか…

まぁ毎日こんな感じで生活をしているのだ。私達野良猫は普通の猫と寿命も短く、ほとんどの猫が5歳で死んでしまう。報われない猫生だよ。

本当に私から見れば人間は幸せな生き物だよ。必ず住処があり、なおかつ自分達でご飯を作ることも出来る、疲れた時は暖かいお風呂にも入れて、毎日快適な温度の空間に居れる。噂によると人間は大体が70歳まで生きれる。この生活になんの不満があるのか私にはさっぱりだ。

正直言ってしまえば人間が私は嫌いだ。こんなに贅沢な生活をしているのに文句ばかり言うし、勝手に私を飼い猫にしていきなり捨てる。そして今、人間からはゴミみたいな扱いを受けている。飼い猫の頃は私にご飯を与えたりしたのに、今はご飯を食べようとすると頭がおかしくなったかのように怒る。

本当に自分勝手で嫌いだ。そこに居る人間全員噛んでやりたい。そのくらい嫌いだし憎い。

だが人間に感謝してることだって少しくらいはある。

優しい人間がたまに私にご飯をくれるのだ。確かに飼い猫の時にもらっていたあんな美味しい物ではなく、なんか四角い茶色のちょっと硬いのに囲まれてる白いふわふわしたご飯“しょくぱん”と言ったかな?それかがほとんどだ。でも今の私にはそれが最高に美味しいのだ。食べ物だけじゃなく水をくれる人間もいる。

でもそんな事よりも1番鮮明に覚えているのは私が足を怪我した時だ。私は不注意で人間が使う“くるま”と言う物にぶつかってしまったのだ。足の骨は折れて歩けない。凄く息苦しい。本当に死にかけていたのだ。そのぶつかった“くるま”はどこかへ行ってしまった。やっぱり人間が嫌いだ、自分勝手で誰にも手を差し伸べず自分の事しか考えない生き物だ。と思っていたのだ。

だがその時1人の人間が現れて私をどこかへ連れていったのだ。そして“びょういん”と言う所へ私は連れていかれた。そこで私は人間により色々としてもらった。具体的にと聞かれると言葉では表しにくい。ただ私はそこに連れていかれたから私は今生きているという事は言える。あの時の人間はどうでも良いただの“野良猫”を助けてくれたのだ。世の中捨てたもんじゃないなと私はその時思ったのだ。

必ずどんな状況でも手を差し伸べてくれる、助けてくれるそんな人間も居るというのを思い知ったのだ。

私と同じ猫では助けて貰えなかった。犬でも無理だ。人間だったから私は助けて貰えたのだ。だから人間を100%嫌いになれないのだ。他の生き物には出来ないことが人間は沢山出来る。全く羨ましい生き物だ。

だが猫生も悪くは無い。どっちがいいかは猫によりけりだろうが私はどちらにも良い所があると思う。他を認めるってことも大事だろうな。人間には人間の良さ、猫には猫の良さがある。それを見落としがちなのさ。

猫は可愛がって貰える。それが猫の良さなのだよ。私も気づいたのは最近だがな。

そして何よりも生きてるってのが最高に幸せなのだ。人間も猫も絶対に変わらない幸せなのだ。私は残りの猫生を楽しんでいくよ。命が人間みたく長くないからこそ全力で楽しむのだ。そしていつ死ぬか分からないからな。

さあ今日のご飯を探しに行くか。お?人間が“しょくぱん”とやらを持って手招きしている…人間の事嫌いだけど仕方ない。行って食べてあげよう。

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