国際経済を安定的に成長させるための政府の役割

 グローバル化する現代の経済市場において、政府の役割はより大きくなっているのではないだろうか。そのような状況のなか、政府は、国際金融のトリレンマの結果、選択できていない1つのデメリットに気を配りつつ、それらを補うような財政政策と金融政策の両方を行った上で(ポリシー・ミックス)、一国単位ではなく、世界規模での今後の経済の在り方を検討していくべきである。その役割は現状では政府にしかできないものであると私は考える。

 たとえば日本を含む多くの先進国の場合は、自由な資本移動と独立した金融政策のために、固定相場制を諦めている。これは金融政策を景気対策の手段として手放したくないこと、グローバル化する時代において自由な資本移動を制限するのは現実的ではないことから、現状では妥当な選択と言えるかもしれないが、一方で自国通貨や外国通貨が大量に流入することによるリスクなど、大きな危機も考えられる。

 私は基本的には独立した金融政策は必要であると考える。なぜならば、金融政策の目的とは、物価の安定、完全雇用あるいは低い失業率、適度の経済成長、国際収支の均衡であり、国内の経済事情を良くするばかりでなく、国際収支の均衡を目指せるからである。ユーロ圏内の諸国は金融政策の自由を諦めているが、理論的には、それにより国内の物価の安定や雇用問題などに対応できない可能性があるのではないだろうか。

 かといって、独立した金融政策と固定相場制のために、資本移動の自由を諦めると、国家間のモノやサービスのやり取りが制限されることになる。国際的にモノやサービスが行き来できる現代において、結果的にそのことは各国を豊かにはしないのではないだろうか。

 自由な資本移動、独立した金融政策、固定相場制のいずれも、良いところがあり、問題を抱えている。政府はそれに対して財政政策や金融政策で対応し、国内の経済水準と国民の暮らしを守った上で、世界的に今後の経済の在り方を検討し、国際的に足並みを揃えていく必要があるのかもしれない。グローバル化の進む時代においては、国際経済もそれに合わせて柔軟に変わらなければならないのではないか。一国の利益だけを考えれば国際経済的に限界があることも、世界規模というより大きな視点で観れば、解決できることもあるのかもしれない。

 国際経済を成長させるための政府の役割とは、国内の経済を安定させ、他の国家と話し合い合意形成を行うことにあるべきではないかと私は考える。

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学問の文章 柳なつき @natsuki0710

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