第5話出会いは時として人を成長させる4
ルファー。さっきカラス言っていたこの城の城主か。
「誰だそいつは」
僕に目を向けることはなくカラスに問いかけながら天蓋の中から現れた人物に思わず息をのんだ。
黒い髪に赤の目。まさしくそれはエール国の特徴そのものなのに、なぜか違うと思った。
なにがと言われればよくわからないけれど、腰までとどくその長い髪、恐ろしく整った人形のような顔はとても冷たく感じる。何が違うのだろう。特徴自体はエールそのものなのに。
怖い。父もその側近達も確かに皆見目麗しい。それよりも遥かに上の“ルファー”と呼ばれた人は完成された美そのもの。
「この子はサーゼ君だよ~」
完璧すぎて冷たく感じる容姿。周りの空気さえ一瞬で自分のものにしてしまうその人にカラスは何の影響もかんじないのか己そのまま返答していた。
「サーゼ?」
「そ、エールの王子様」
「なんでそいつが」
「捨てられたんだよ」
あまりにも普通に、僕にとっては最悪の出来事を相変わらずゆるいまま答えるカラス。そんな話をこの綺麗な人に知られたことで何故か恥ずかしくなって思わずうつむいてしまった。
うつむいてる僕にその言葉を聞いた彼の表情はみえない。僕の視界に入ってくるのは細くもしなやかな筋肉のついた綺麗な足。その足が一歩、また一歩と僕に近づいてくる。
「おい」
目の前にいる。顔を上げればきっとこの人の綺麗な顔が僕の間近にあるのだろう。
どんな顔をすればいい?こんなきれいな人に僕のこの目を見せてもいいのだろうか。僕の目をみた嫌悪の表情が頭の中に浮かんでくる。
「いっ、、、」
無理やり頭をあげさせられる。細い腕にどこにそんな力があるのだろうか。思っている以上に力強いその手。
「子供には優しくね」
相変わらず緊張感ないその声色にいらついてしまう。
そうおもうなら助けてほしい。その思いは間違えてないはず。掴まれてる頭。その手を振りほどこうとさっきから頑張っているのにちっとも動きはしない。
だから、その力はどこからでてるんだよ。これでもエールの王の血をひく僕なんだからそんなに弱くはないのに。あの城のなかでは通用しなくても国民には一切負け知らずなんだから。
そんなぼくでもピクリともしない腕の力には絶望すら襲ってくる。こんな見ず知らずの人間に負けるなんて。この人は間違いなく選ばれし人種そのものというわけだ。
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