玉川上水近くにいますし、かの作家とこの地のことも知っているので、文章から身近な景色が浮かんできて、嬉しかったです。武蔵野そのままですね。古風な文章で現代小説を書くと、こうなるんですね。
幻想的にして闇を抱えた深淵を思わせる、帰りを待つ女と男の物語。これはもう恋愛などという爽やかな境地をとうに超越しているかのように感じました。言うならば、人生そのもの。砂漠が美しいのはどこかに井戸を隠しているから…『星の王子様』に書かれた一文ですが、男女の結婚生活にもそのような美と理想が潜んでいるのでしょうか?それとも理想とは現実と遠くかけ離れたものだからこそ美しいのでしょうか?男と女の関係について深く考察したい方におススメです!
玉川上水の歴史に重ね合うように物語が進む、見事な技巧の幻想譚です!