ザリガニ放談
きさらぎみやび
ザリガニ放談
「ザリガニの話していい?」
「またずいぶん唐突だな。まあいいけど」
「ていうかザリガニ知ってる?」
「馬鹿にしてんのか。知ってるよ。よく田舎の小学校で飼ってるだろ」
「あれねー、だいたい『いきものがかり』が世話さぼるんだよね」
「とりあえず平仮名はやめよう。なんか某アーティストみたいだから」
「ああはいはい。生き物係が世話さぼるじゃない?」
「そうだな、夏休みとかで放置しちゃって死んじゃうんだよな」
「水も腐っちゃって臭かったり」
「あるある」
「いや、こんなあるあるを話したいんじゃないんだよ」
「じゃあなんだよ」
「ザリガニってさ、呼び方がなんかいまいちだよね」
「どういうこと?」
「だってさ、『ザリ』で『ガニ』だよ。名前が硬すぎるって」
「いや響きだけじゃん」
「いやいや、漢字だって相当だよ」
「へー、どんなの」
「『蝲蛄』」
「うわ、読めねえ」
「他にも、『蜊蛄』」
「いや無理だわ。読める気がしない」
「あとは…」
「まだあるんかい」
「『躄蟹』」
「一瞬カニカニって読むかと思ったわ。いやでも最後のやつは蟹って字があるからまだ読めるわ」
「それがさー、問題があってさー」
「なに?」
「あいつら、カニの仲間じゃないんだよ」
「え、カニって名前についてるのに?」
「そう、エビガニって呼ぶ地方もあるくらいなんだけど」
「エビガニってもう甲殻類の代表みたいじゃん」
「でもあいつらは、エビの仲間らしいんだよ」
「あー、まあ見た目は確かにカニっていうより、エビだな」
「正確にいうと、カニってエビに含まれるらしいんだけどね」
「そうなの?もうよくわかんねえな」
「まあザリガニを食用としている国もあるからね。日本ではあんまり食べないけど」
「食べるとこなさそうだもんな」
「そもそもさー」
「まだなんかあるのかよ」
「そもそもあいつら、水の中にいるからまだいいけどさ、地面の上を素早く動いていたら怖くない?」
「それもうサソリだな」
「イセエビだって地面の上を猛スピードで這いまわってたら怖いけどさ」
「確かに」
「大体あいつらひっくり返してよく見たら、ほぼ虫じゃん」
「虫いうなよ、想像しちゃったじゃん」
「あなたはだんだんエビが虫に思えてくる~」
「やめろって。呪いか。エビ食べられなくなるだろうが」
「で、ザリガニなんだけどさー」
「ああそういやザリガニの話だったな。忘れてたわ」
「いい呼び方を考えてみたんだよ、なんかいかにも優雅なやつ」
「へー、どんな?言ってみろよ」
「伊勢海老のオマージュ、田園風」
「フランス料理かよ」
ザリガニ放談 きさらぎみやび @kisaragimiyabi
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます